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2024年

     

■石川さんの遺志を引き継ぎ、必ずや狭山再審闘争に勝利しよう!(4月5日号)

狭山事件で無実を訴え再審を求め続けてきた石川一雄さんが3月11日午後10時、埼玉県狭山市内の病院で亡くなった。86歳だった。奇しくもこの日は、61年前に浦和地裁で死刑判決が出された日であった。
3月23日に開催した第66回県連大会では、参加者全員で黙祷を捧げたが、あらためて石川さんのご冥福を心よりお祈りする。
3月4日におこなわれた第64回三者協議で検察が「5月に意見書を提出する」としたのに対し、裁判長が次回期日を4月に設定した。極めて異例であることから証人尋問の実現に大きな期待を持っていただけに、その無念さは計り知れない。
石川さんの人生は闘いの連続であった。32年にわたる獄中生活、1994年の仮出獄後も続く再審闘争。決して諦めることなく、不撓不屈の精神を持って「必ず生きてえん罪を晴らす」と無実を訴え続けた石川さんの姿は、私たちに勇気と希望を与えてきた。
狭山事件は部落差別に基づくえん罪事件であるが、石川さんに連帯し支援する輪は、同盟員だけにとどまらず、労働組合、住民の会、学者、文化人などにも広がってきた。私たちは石川さんの遺志を受け継ぎ、無罪を勝ち取るために、これからも闘い続けることをあらためて確認したい。
第3次再審請求は請求人である石川さんが亡くなったことで終了となる。再審法には「受継」の規定がなく、配偶者であっても引き継げない。今後、第4次再審請求を連れ合い早智子さんが東京高裁に申し立てることになる。
4月16日には、日本教育会館で追悼集会が開催される。また5月23日も予定通り、日比谷野外音楽堂で「狭山事件の再審を求める市民集会」が開かれる。早智子さんを全力で支え、第4次再審闘争になんとしても勝利しなければならない。
そして「再審法」改正も焦眉の課題である。
石川さんが存命のうちに再審開始が決定されなかったのは、再審法の不備が大きい。袴田事件でも袴田巌さんが再審で無罪判決を得るまでに逮捕から58年、再審申立から43年を要した。検察官が証拠開示に応じず、また裁判所が再審開始を決定しても検察が不服申立をおこなうために、えん罪犠牲者は長い闘いを不当に強いられてしまう。
その原因となっている現行の再審手続きの不備を正し法改正すべきとの声は、袴田事件の再審開始を機に大きくなっている。
2024年3月には各党の党首らがよびかけ人となり、超党派の「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が結成された。現在、全国会議員の過半数、370人以上が賛同しており、議員立法として再審法改正法案の提出、可決成立が実現可能な状況である。
再審法改正を求める請願署名を集めるとともに、地方議会での意見書採択の運動、地元選出の国会議員への議連参加の要請にも全力で取り組もう。

■第66回県連大会に結集しよう!(3月5日号)

3月23日、加古川市人権文化センターにおいて、第66回県連大会を開催する。本大会を部落解放運動の未来を見据え、組織と運動の改革に本格的に着手する契機と位置づけたい。
現在の被差別部落の置かれている状況を見ると、都市部落で顕著なように若者が部落から姿を消し、そして社会的に困難を抱えた人たちが部落に流入するという社会矛盾が集中する地域へと変貌してきている。地域イコール「部落民」「部落出身者」が集住する地域という構図は崩れ、部落に対 するアイデンティティを持つ若者たちの多くが部落外に居住しているという実態が生まれている。まさに地域を基盤としてきた部落解放運動の在り方が問われている。部落解放同盟の基礎組織が支部であることはこれからも変わらないが、活動を休止する支部も続出する中、出身地を離れて生活する人、転入・転居などで部落外に居住する出身者、個人単位で部落解放運動に参加する意思を持つ人たちを組織するための方策として、本大会では県連直轄支部の創設を提案する。
「情報流通プラットフォーム対処法」(以下、情プラ法)の本格施行が5月に迫っている。安倍政権発足以降、個別人権課題の立法措置が実現してきたが、すべて理念法であり、実効性などにおいて大きな課題を残している。今回の「情プラ法」制定は高度情報化社会における差別や人権侵害を許さない実効的なとりくみへの第一歩である。「包括的差別禁止法」と国内人権委員会の創設などにむけて、さらに広範なとりくみをすすめていこう。
また再審法の改正を求める運動にも全力で取り組みたい。石川一雄さんの再審無罪を一日も早く実現するためにも、再審における証拠開示の義務化や再審開始決定に対する不服申し立ての禁止など、再審法の改正は急務である。県内各地での国会請願署名や地方議会での意見書採択にも取り組もう!
2025年は「部落地名総鑑」事件の発覚から50年目となる。この「部落地名総鑑」の元資料となったのが、旧内務省の外郭団体である中央融和事業協会が作成した報告書「全国部落調査」である。この報告書の復刻版を出版しようと画策した鳥取ループ・示現舎は、インターネット上に部落の地名や動画、人名をさらす行為を敗訴した現在でも続けており、個人でも簡単に身元調査がおこなえる状態が野放しになっている。東京高裁で画期的な「差別されない権利」が認められ、確定した。新たにスタートした「部落探訪」削除裁判闘争で鳥取ループ・示現舎は、裁判引き延ばしのために移送申し立てなどの姑息な手に出ているが、これらの動きに屈することなく完全勝利に向けてさらに闘いを強化しよう。
課題は山積しているが抜本的な組織改革が求められている。部落差別が存在する限り、荊冠旗を降ろすことはできない。代議員の活発な論議で大会の成功を勝ち取ろう!

■阪神・淡路大震災30年 人権のまちづくり運動の展開を(2月5日号)

 6434人が亡くなった(行方不明者3人)阪神・淡路大震災の発生から1月17日で30年を迎えた。
当日は県内各地で追悼行事がおこなわれたが、神戸市中央区・東遊園地での「追悼のつどい」には7万5000人が訪れたという。この数字は過去2番目の多さだったと聞くが、震災を風化させてはいけないという思いを多くの人が持っていることの証である。
しかしながら、兵庫県知事は、30年の節目を迎えるあたっての記者会見で、阪神・淡路大震災の犠牲者数(6400人以上)を「4600人」と間違えた。亡くなられた6434人ひとりひとりにそれぞれの大切な人生があったこと、被災地に積み重なった人びとの思いを受け止めることもできないのかと暗澹たる気持ちにさせられた。
 能登半島地震からも1年が過ぎた。県連も昨年7月に珠洲市での支援行動をおこなったが、その時点でもまだライフラインは復旧されていない状況だった。能登地方は9月にも豪雨に見舞われており、復興への道は依然として遠い。地震で被害が大きかった原因として、建物の耐震化率の低さや、地域の高齢・過疎化などが挙げられたが、被害が地域の経済力に左右されてはならない。貧富の差の拡大、政治・経済の一局集中も今回の被害の遠因とも言える。また国や自治体の初動対応の遅さも指摘されたが、ボランティアとの連携、避難所運営などを見ても、過去の災害の教訓が生かされず、逆に後退している感が否めない。
1月15日の神戸新聞の「正平調」が心に残った。防災学の第一人者である室崎益輝・神戸大名誉教授は「震災30年で私たちが学んだ最も大切なものは何でしょう?」という問いに「それは市民社会です」と即答している。正平調は「市民社会とは実に幅の広い概念だが、私たち一人一人の善意が自然に集まって形になり、支え合う社会のことだろう。その寛容さと柔軟さは、この30年で育ったろうか」「社会は逆に不寛容と硬直に向かっているのではないか」と投げかけた。
 この国が無援社会であると言われて久しい。自然災害は孤独という新たな災害を生む。震災から30年を経て、街の風景は大きく変容してしまったが、「おせっかい」なぐらいの温かさを持つ部落のコミュニティ力は維持していかなければならない。南海トラフ地震の発生確率は今後30年以内で80%だと言われている。日頃からの備えと対応が重要である。地域内の高齢者、ひとり親家庭、障がい者、外国人等の多様な人々が住みやすく、近隣住民と支え合い、孤立することのない「顔の見える」人権のまちづくり運動の展開が求められている。
 30年前に全国からいただいた熱い支援を兵庫県連は決して忘れない。被災地に駆けつけてくれた全国の兄弟姉妹にどれだけ励まされてきたことか。災害時にこそ「いのち」と「くらし」を守る部落解放運動の真価は発揮される

■2025年の展望と課題(1月5日号)

 2025年は、部落解放全国委員会から部落解放同盟に改称して70年、同和対策審議会答申から60年、部落地名総鑑事件から50年という節目づくしの1年となる。
 2025年の部落解放運動の展望と課題を考える。
① 次世代育成に取り組もう!
昨年は1年間をかけて、役員定数の削減や組織内のジェンダーバランスの健全化を図るための論議に多くの時間を費やし、財政の健全化にむけた予算の削減も提案してきた。すべての提案が一朝一夕にはいかず、県内同盟員にとって「痛み」をともなうものだが、中・長期的な運動を展望するために必要な改革であることをご理解いただきたい。
積み上げてきた運動の成果や経験を否定するものではないが、時代に合った効果的な手法が求められている。次世代を担う青年層が魅力を感じて参画するような部落解放運動を創造しなければならない。
今年は阪神・淡路大震災から30年のである。30年前に被災地を駆け回り活躍した青年たちのような人材を掘り起こし、育てていこう。
②狭山第3次再審闘争の勝利にむけて石川一雄さんの不当逮捕から62年を迎える。袴田事件の再審無罪確定を通じて、再審手続きの不備を変えるべきだという世論は大きくなっている。昨年3月に「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」が超党派で結成され、衆議院解散前には全国会議員の半数近い350人が参加していた。また、400を超える地方議会が「再審法」改正を国会に求める意見書を採択しており、県内では3市(神戸市、高砂市、加古川市)が採択している。
石川さんの再審無罪を一日も早く実現するためにも、再審における証拠開示の義務化や再審開始決定に対する不服申し立ての禁止などの「再審法」改正が急務である。国会議員に対する議員連盟参加の働きかけや各自治体での意見書採択などに取り組もう。
③「部落探訪」裁判の完全勝利を
2016年から闘ってきた鳥取ループ・示現舎に対する「全国部落調査」復刻版出版事件裁判では、昨年12月に最高裁が原告・被告双方の上告を棄却し、東京高裁判決が確定した。
一審の地裁で出版差止の都府県の範囲は25都府県だったが、高裁判決では31都府県に拡大された。さらなる拡大を期待していたが、最高裁はこれを回避した。被差別部落の地名を晒すことはどの都府県であっても違法である。原告がいない都府県を対象範囲外とした点は厳しく批判しなければならない。
しかし、他方で「差別されない権利」は憲法13条及び14条に由来すると宣言した高裁判決が維持された。最高裁が「差別されない権利」を認めたことは画期的であり今後の闘いの大きな後ろ盾となるだろう。
一昨年末からは、新たに全国3ヶ所(新潟、埼玉、大阪)で「部落探訪」動画の削除を求めた闘いが始まっている。「情プラ法」の成立なども追い風にしながら、確信的な差別者を追い詰め、「差別禁止法」の制定をめざそう。