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11月19日から20日にかけて、部落解放研究第57回全国集会が神戸市で開催される(実行委員会主催)。兵庫県での開催は第37回(2003年開催)以来21年ぶり。「阪神・淡路大震災30年、戦後80年にむけて、人権・平和・環境の確立と、いのちを守る協働・共生の取り組みを強化し、社会連帯を実現する部落解放運動を大きく前進させよう!」という集会テーマのもと、全体集会と5つの分科会、フィールドワークが展開される。同盟員をはじめ行政や企業、宗教団体、教育関係者など、広範な人々の参加を期待したい。
1日目の全体集会では、玉木幸則さん(内閣府障害者政策委員会委員)による記念講演のほか、地元報告として、被災地NGO恊働センター前代表の村井雅清さんによる講演がおこなわれる。同センターは、1月の能登半島地方での地震直後から石川県七尾市を拠点として支援活動を続けている。地震による甚大な被害に加え、9月の豪雨によってさらにひどい状況に見舞われている現地の状況をふまえ、阪神・淡路大震災から来年で30年を迎えるにあたっての教訓や思いなどを語っていただく。
2016年の部落差別解消推進法の施行以降、兵庫県内では8つの自治体で部落差別解消・人権条例が制定された。第2分科会「部落解放行政・人権行政、人権の法制度確立にむけた協働した闘いの課題」では、その8つのうち、猪名川町とたつの市から報告がおこなわれる。猪名川町では、「猪名川町部落差別の解消の推進に関する条例」が今年4月に施行された。また、たつの市では「たつの市部落差別の解消の推進に関する条例」が2018年に施行され、今年6月には県内で初めてネット上の差別や人権侵害の防止を目的とした条例が成立した。法律に基づいた条例制定の意義を確認するとともに、未制定の自治体での制定へむけた動きに勢いをつけるものとしたい。
第4分科会「狭山事件の再審とえん罪防止にむけた課題」では、狭山事件再審弁護団による報告と、10月に再審無罪が確定した袴田事件の袴田巌さんの姉ひで子さんや弁護団、市民の会などから報告を受ける。袴田さんに続き、石川一雄さんの再審無罪、再審法改正へとつなげていこう。
第5分科会「部落差別事件の今日的特徴と取り組みの課題」では、三重県の教員による土地差別事件や大阪市職員による部落差別発言事件についての報告のほか、宅建業者による「同和」地区問い合わせ事件に関するとりくみについて兵庫県連が報告する。現在も頻発する部落差別の現状と課題を確認し、今後の活動に活かさなければならない。
その他、第1分科会「部落問題(部落史)・人権問題」、第3分科会「同和教育・人権教育、人権啓発の課題」のほか、「港町神戸と被差別部落」「神戸長田の在日コリアンの歴史を歩く」の2コースのフィールドワークも予定されている。各地のとりくみに学び、議論を深める神戸全研にしよう。
県連は、兵庫県に対する2024年度の要望を取りまとめた。
県議会で斎藤知事の不信任決議が全会一致で可決され、議会の解散か辞職・失職か両にらみの状態に置かれている(9月25日時点)。県政は混乱を極めているが、今年度も人権侵害救済、人権啓発、同和行政・人権行政の推進、男女共同参画社会実現、労働・就労支援、生活、産業、農業などの9項目で人権施策のさらなる充実を求めていく。
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部落差別解消推進法の施行後、県内では8つの自治体で「部落差別解消」「人権」条例が制定されている。
今年4月から施行された猪名川町の「部落差別の解消の推進に関する条例」では、ネット上の部落差別への対応として、モニタリングによる実態把握、削除要請とともに、差別行為者への指導および助言(第12条)、勧告等(第13条)、命令(第14条)と段階を踏み、それでも削除に応じない場合は、差別行為者の氏名等の公表(第15条)をすることが明記された。また、たつの市では、今年6月に「インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」が制定されるなど、インターネット上での人権侵害・差別の拡散への対策は具体的に進んでいる。
しかしながら、鳥取ループ・示現舎による「部落探訪」動画の拡散については、模倣犯が複数登場してきており、新たな局面を迎えている。特に兵庫県内だけでも130本以上の悪質な動画を流布している「旨塩きゅうり」については看過することはできない。
今年5月のプロバイダ責任制限法の改正で「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)が成立した。被害者の早期救済を明記している点などは評価できるものの、対象が大手プラットフォーム(PF)事業者であり、中小の事業者やウェブサイト管理者は対象外であることや、それぞれのPF事業者が作成・公表する「削除の基準」の内容が事業者ごとで異なることなどの問題点も含んでいる。今回の「情プラ法」制定を契機に「包括的差別禁止法」の制定と国内人権委員会の創設をめざさなければならない。
また、戸籍謄本等の不正取得事件も依然として起こっており、昨年も東京都の探偵業を兼務する行政書士による不正取得事件が明らかとなった。これらの不正取得を防止する有効な手段としての「本人通知制度」については、県が「本人通知制度導入の手引き」を作成し、県内全市町に指導した結果、現在28市11町で実施されているが、どこの自治体も登録者の伸び悩みの課題を抱えている。
そして昨年頻発した不動産業者による「同和」地区問い合わせ事件についても、再発防止にむけて県レベルでの研修会を実施し、業界団体に対する指導・啓発を徹底するとともに、事業者を対象にしたアンケート調査を求めていく。
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以上のような認識のもと、県連は県への要望をおこなう。各ブロックや市連協でも、行政交渉・要望行動を実施してもらいたい。
「部落探訪」の削除を求めた裁判が始まっている。「部落探訪」は鳥取ループ・示現舎がホームページ上に全国各地の被差別部落を晒す動画や写真を掲載しているものである。2015年12月から掲載され、これまでに「人権探訪」「曲輪クエスト」などと名前を変更してきたが、中身は変わらない。被差別部落内にある個人の住宅や表札、自動車のナンバープレート、姓名が入った墓地の墓碑銘などの動画や写真を掲載し、揶揄するコメントをつけてネット上に拡散し続けている。
鳥取ループ・示現舎を訴えた「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審判決(2023年6月)を待って、大阪、埼玉、新潟の三地区が提訴した。
大阪は、大阪府内に暮らす当事者が昨年11月に削除を求める仮処分を申し立て、今年5月に仮処分決定が出された後、大阪府連とともに削除と損害賠償を求め7月に提訴した。
埼玉では1人の支部長と埼玉県連を原告として昨年12月に、新潟では3人の支部長と新潟県連が原告となって今年1月に提訴した。
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被告らはユーチューブ上のチャンネルでも「部落探訪」動画を公開していたが、これはユーチューブを運営するグーグル社が、2022年に同社のもつヘイトスピーチポリシーに則って約200本を削除した。しかし、同じ類の動画を有料会員のみが視聴できるサイトに掲載し、今なお公開を続けている状況である。
「部落探訪」削除のために部落解放同盟は法務省やインターネットプロバイダ協会などの民間ネット事業者団体にも削除を要請してきたが、法律が整備されていないことを理由に放置されてきた経過がある。
ネット上にあふれる差別情報への対応策として、今年5月に「情報流通プラットフォーム対処法」が、プロバイダ責任制限法の大幅な改正という形で成立した。ネット上の人権侵害情報の放置・拡散への早期対応がプラットフォーム事業者に義務付けられたことは一定の前進と言える。しかし一方で、対象となるプラットフォーム事業者は大手事業者のみで中小の事業者は対象外であることや、「削除の基準」も業者ごとに異なるなど、懸念材料もある。一企業の判断ではなく、「差別投稿の削除基準」は国が決めるべきである。
今年6月には、たつの市でインターネット上の差別を防止する条例が制定されたが、高度情報化社会において深刻化する差別や人権侵害を許さないため、部落差別解消推進法の改正や差別禁止法の制定などを見据えたとりくみを一層強化しなければならない。
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ネット上で晒された地域の当事者が裁判の原告になることはたやすいことではない。「差別を許せない」という強い気持ちをもっていても、「(原告になることで)家族や親戚が差別されるかもしれない」という不安をともなう。簡単な決断ではないことをあらためて確認しておきたい。そのうえで、「部落探訪」削除裁判へのできうる限りの支援をしていこう。
ロシアによるウクライナ侵攻から2年以上が経過した。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの集団虐殺(ジェノサイド)と言える攻撃も依然として続いている。多くの死者・避難民を出している戦闘を一刻も早く止めなければならないが、これらの戦争・攻撃をめぐる各国の対応は一致せず、対立は強まるばかりである。国際社会の分断と対立にとどまらず、世界大戦につながりかねない危険なリスクをはらんでいる。
暴力が次の暴力を引き起こすことは、これまでの歴史が物語っている。私たちは、現在起きている戦争・攻撃に加担するのではなく、暴力の連鎖、分断の流れを食い止めるためのとりくみに力を注がなければならない。
国内もまた、戦争にむかっていると言わざるを得ない。平和憲法の解釈を変えようと「尽力」したのは安倍元首相だが、今の岸田首相はその「地盤」の上で、防衛力強化のための財源を確保するなど、防衛費増額を欲しいままにしている。
しかし、軍備増強で平和が保てるだろうか。相手がそれ以上のものを持てば、さらにエスカレートし、際限なく軍備が拡張していくのは明らかである。ミサイル基地を作り次々と武器を購入していくことは、敵視される材料を増やすことそのもの。そして戦争となったときターゲットにされるのは、在日米軍基地が集中する沖縄本島や自衛隊のミサイル基地が配備された南西諸島である。
沖縄では本土復帰した1972年から2023年の51年間で、米軍人など米軍構成員の刑法犯による摘発は6235件に上る。そしてまた米兵による性犯罪が起きた。国は、事件が昨年末に発生し、今年3月に起訴されていたことを把握していた。しかし、6月25日に沖縄の民放報道を受けて沖縄県が外務省に確認するまで明らかにしなかったという。6月16日の県議会議員選挙、23日の沖縄慰霊の日の直後のことである。
在日米軍基地の負担や辺野古の新基地建設への反対運動などの民意を無視して戦争のための準備をしているような状況のなか、沖縄をどれだけ軽視し、犠牲にするのだろうか。この状況に一日も早く歯止めをかけなければならない。
戦後79年目の8月を迎える。「核と人類は共存できない」を基本理念に据える原水禁世界大会は7月の福島のあと、8月に広島、長崎で開催される。戦争・被爆体験者が減少・高齢化し、戦争の悲惨さが直に伝えられる機会は少なくなっているが、平和への歩みを止めてはならない。この間、兵庫でも高校生平和大使の活動が活発に展開されているが、唯一の被爆国である日本に暮らす私たちは、「戦争は最大の人権侵害」であることをあらためて確認し、戦争のない平和な社会を実現しよう。反戦・平和のとりくみに県連も奮闘し、平和運動を前進させよう!
2024年度の防衛費は、防衛力強化関連経費とあわせると約8兆9000億円となり、10年連続で過去最高となった。沖縄では宮古島や石垣島などの離島において自衛隊配備が進み、ミサイル部隊までもが配備されている。本島の辺野古では在日米軍基地が民意を無視して建設されていることを踏まえても「戦争のできる国」へと突き進んでいる印象しかない。この状況は、この国に暮らす人々に大きな負担を強いるものであり、不安を駆り立てるものである。
さらに、食料品や日用品などさまざまな商品・サービスが値上がりを続け、家計を圧迫する状況が続いている。定額減税の実施など対策はとられているが、膨大な防衛費と比較すれば微々たるものである。
これらの状況は、非正規雇用の多い部落の青年にとっても大きな影響をもたらすものである。
このような情勢のなか、県連青年部は7月21日、神戸市教育会館で第31回大会を開催する。青年部の結成から30年が経過した現在、常任委員の選出など厳しい状況を迎えているが、これからの解放運動を担う青年部活動を展望する機会とする。
第31回大会終了後は、独協医科大学准教授で放射線衛生学の専門家の木村真三さんを講師に、記念講演を開催する。福島第1原発事故の直後から福島県で放射能汚染の調査をおこなっている木村さんは、父がハンセン病だった大伯父のことを隠して生きてきたことを知り、本業の傍らその大伯父と父の人生を辿る活動を続けている。ハンセン病患者への差別の根深さを実感しながら活動を続ける木村さんの話から学び、部落問題にもつなげて考える機会としたい。
県連青年部では、現在4ブロックから6人の常任委員を選出している。それぞれに仕事など忙しい状況を抱えるなかでの活動となり、厳しい側面もあるが、いまだ残る部落差別を許さないという思いを軸に、ネットワークを大切にしながら、引き続き活動に取り組んでいかなければならない。
県連青年部はこれまで、青年が私生活や運動との関わり方、支部での活動などについて抱える悩みを共有し、相談できる居場所としての機能を果たそうと模索を続けてきた。この姿勢を維持しつつ、次世代につながる動きにも力を入れたい。
また、支部に所属しているかどうかを問わず、部落問題をはじめとするさまざまな人権課題に関心をもつ青年や高校生が参加しやすい学習会や交流会など、その仕組みを工夫していくことも重要である。
さらに、ネット上で匿名の書き込みなどによって部落差別が拡大している状況に対し、青年層だからこそできる違反通報や情報発信などのとりくみも忘れてはならない。
兵庫の青年部活動を前進させるため、青年部大会に結集しよう!
来る6月22日・23日、ウィズあかしを会場に第29回兵庫県連女性部大会・部落解放第61回兵庫県女性集会を開催する。
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事件発生から61年となった狭山事件の再審闘争の闘いや、鳥取ループ・示現舎との裁判闘争をはじめ、部落解放運動における課題は山積している。「同和」地区問い合わせ事件や戸籍謄本等不正取得事件が近年発覚しているが、このような問い合わせや身元調査がおこなわれていることから、いまだに結婚や就職の際に差別が起きていることが容易に想像できる。人権の視点を見据えた企業運営や、行政での人権研修の実施を求めていかなければならない。
ウクライナやガザでの戦争が泥沼化している状況も報道されるが、こうした状況では子どもや女性、障害者などの社会的弱者が一番の犠牲となる。唯一の被爆国に暮らす私たちは、戦争は最大の人権侵害であることを引き続き強く訴えていくことが重要である。
女性を取り巻く情勢もまた、男女の賃金格差や管理職における女性の比率の低さなど、雇用の分野においてもその改善はみられていない。政治の世界でも女性議員の割合は低く、「政策意思決定機関に女性の進出を」と謳われてはいるが、現実は程遠いものである。女性が力を発揮できる体制づくりを求めると同時に、女性の声を政策に反映させるとりくみも必要である。
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また、部落差別や女性差別のほか、障害者差別、性的マイノリティへの差別など、そしてそれらが重なり合った複合差別にもしっかりと視点を置いたとりくみも重要である。
女性部大会・女性集会では、関西大学人権問題研究室の宮前千雅子さんを講師に、「婦人水平社100年とジェンダー平等」と題した記念講演をおこなう。講演では、女性の人権が著しく制限されていた全国水平社創立当時の部落女性の教育や生活、労働などの状況、部落女性が経験した抑圧や困難から婦人水平社が生まれていった歴史を学ぶ。男性中心の社会で「いないこと」にされていたマイノリティ女性が立ち上がっていった歴史を、差別をなくすための運動の手がかりとしたい。
また、「女性らしさ」「男性らしさ」という決めつけや男女二元論の意識が依然として強いなか、トランスジェンダー差別が顕在化し、ひどくなっている状況がある(916号既報)。「いないこと」にされているのはトランスジェンダーなど性的マイノリティも同様ではないだろうか。性的マイノリティの「現実」をしっかりととらえ、意識変革をしていかなければならない。
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私たちは、女性が参画しやすい組織、女性が力を発揮できる運動になっているかを確認しながら、部落解放運動を前進させ、人権確立社会をつくっていかなければならない。すべての力を結集して、女性部大会・女性集会の成功をめざそう。
狭山事件の発生から61年。狭山事件第3次再審闘争は最大の山場を迎えている。
狭山事件再審弁護団が2022年8月に事実取調請求書を提出して以降、全国で署名活動が展開され、新証拠の鑑定書を作成した鑑定人らの尋問の実現を求める署名は52万筆を超えた。しかし、多くの声が裁判所に届けられてもなお、事実調べはいまだ実現していない。
事件発生当時に24歳だった石川一雄さんは85歳になった。第3次再審闘争も18年という長さになる。石川さんは仮出獄の扱いのまま、選挙権もない状態だ。石川さんの人権を回復できるよう、再審無罪を必ず勝ち取らなければならない。
3月25日におこなわれた拡大全国狭山活動者会議・狭山住民の会全国交流会では、多くの新証拠のうち、今後はインク鑑定に絞って闘いをしていくことが基調提案で確認された。大野勝則裁判長が2023年12月に退官し、新たに家令和典裁判長が就任した。これまでの三者協議では書面でのやりとりが続いてきたが、家令裁判長が過去に担当した裁判で科学的証拠を重要視してきたことを考慮し、狭山弁護団は4月19日の第59回三者協議でプレゼンテーションを実施した。弁護団の竹下政行事務局長は、「『事実調べをする必要はない』『(狭山)弁護団が提出している証拠には新規性も明白性もない』とする検察官の意見を崩していきたい」と話している。
「20代や30代の若い世代が狭山事件のことを知る機会が少なくなっている。若い人たちへの浸透を図っていきたい」と赤井隆史中央書記長が活動者会議で述べた。鑑定人尋問の実施を求める署名は52万筆、そのうちオンラインは5000筆に満たない。このことからも、若い世代への周知が十分でないことが読み取れる。「みなさんの声を届けてもらえれば、えん罪を晴らすことができる」と石川さんが語るように、証拠が捏造されたえん罪事件であることを、SNSも含め様々な方法を駆使して広くアピールしていかなければならない。
50年前の寺尾不当判決(確定判決)が石川さんを「有罪」とした根拠は、多くの新証拠によって崩れている。これまで再審無罪を勝ち取った足利事件、布川事件、東住吉事件などでは、証拠開示や事実調べが再審開始のカギとなった。再審無罪を勝ち取るためには、裁判所に鑑定人尋問などの事実調べを実現させることや、さらなる証拠開示が非常に重要である。東京高裁は、専門家である鑑定人から鑑定内容と結果、その意味を聞き、精査したうえで新証拠を評価し、公正な判断をすべきである。
5月23日に、東京・日比谷野外音楽堂において「狭山事件の再審を求める市民集会」が開催される。最大の山場を迎えた第3次再審闘争のなかでおこなわれる市民集会に参加しよう。そして世論を喚起し、鑑定人尋問などの事実調べや裁判所によるインク鑑定の実施を求め、再審開始を実現させよう!
ひょうご部落解放・人権研究所は3月12日、ホームページに「2023年度ひょうご人権総合講座「ジェンダー①(総論)」中止に関する経緯と見解」をホームページに公表した。11月2日に予定していた牟田和恵大阪大学名誉教授の講義中止に関するもので、理由として、牟田さんの言説を「トランスジェンダー女性に対する差別を助長するものであり人権侵害行為だと判断するに至ったから」と書かれている。
県連は、部落差別をはじめあらゆる差別を許さない立場から、研究所の判断と見解を支持する。
昨年6月、LGBT理解増進法が成立、施行された。元々当事者の人たちが求めていたのは、性的マイノリティに対する差別禁止法である。しかし、成立までの過程で、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」というマジョリティへの配慮を強いるような条項が追加されるなど様々な修正が加えられる中で、当事者団体のほとんどが反対するものとなった。
この過程でインターネットを中心に吹き荒れたのが「女性と名乗れば誰でも女性になれる」「女性を自称すれば誰でも女性トイレや風呂に入れるようになり性犯罪が増える」等、トランスジェンダーへの偏見に基づくデマ・ヘイトである。
トイレや公衆浴場の安全性はセクシュアリティに関係なく担保される必要があるが、それは設計や運営の問題であり、「女性の安全なスペース」の確保とトランス女性の排除を結びつけることは差別である。
たとえば被差別部落出身者が犯罪をおこなったときに、「だから部落はこわい」「部落は犯罪者の集まりだ」と属性と結び付けるのは差別である。それと同様のことがトランスジェンダーに起きていると言える。
「見解」で批判された牟田さんの7月6日付note「トランス問題と女性の安全は無関係か---「LGBTQ+への差別・憎悪に抗議するフェミニストからの緊急声明」についてフェミニストからの疑問と批判」には、トイレについて「「トランスジェンダーへの配慮」のもとに安全のハードルが下がっている」、また性別適合手術を受けていないトランス女性がネット上で「女風呂に入った体験を喜々と語り、またそうした行為を勧めている」と、真偽不明かつ、トランス女性が安全を脅かしているかのように書かれている。こうした言説を、トランス差別に加担するものと研究所が判断したのは当然である。
「見解」には、石元清英研究所所長が「牟田さんのnote文書は差別ではない」として辞任した経緯も書かれているが、この判断については大変残念に思う。
研究所「見解」に対しては大きな反響があったと聞く。その多くが研究所の姿勢を支持する意見で、特にトランス当事者から「安心した」「嬉しかった」という言葉が寄せられている。
県連は24年度運動方針でも「女性差別や複合差別、LGBTQ+に対する差別などの学習会を開催し、男女平等社会への意識の変革をめざす」とあげている。きちんと学びながら、差別を許さないとりくみを進めていきたい。
3月24日、兵庫県立のじぎく会館において、第65回県連大会を開催する。1年間の活動を総括し、今後1年の運動方針を決定する重要な機会である。
昨年、兵庫県水平社の創立から100年という節目を迎え、さらに運動を前進させようと決意を新たにしてきたが、今年を部落解放運動の未来を見据え、組織と運動の改革に着手する一年としなければならない。
この間、続いてきた新自由主義政策のもと、貧困と格差が拡大、固定化しており、感染症拡大のなかで、よりいっそう深刻化している。こうした閉塞感が生み出す社会不安や不満を背景にして、差別と暴力が公然と煽動されており、人権と平和を確立するための闘いはますます重要になってきている。
インターネットモニタリング事業については、2024年度中に県内全市町で導入見込みとなるなど、これまでの成果も着実にでてきているが、部落差別解消推進法の周知をさらに進めるとともに、昨年6月の「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審判決をふまえ、インターネット上の部落差別情報・差別扇動の問題点についての認識を共有し、ネット上の部落差別を規制する法整備を求めていく必要がある。また、昨年12月には猪名川町で部落差別解消推進条例が成立し、推進法施行後、県内で8つめの条例となった。条例では、モニタリングによる実態把握や削除要請、指導、勧告など段階を踏み、それでも削除に応じない場合は名前や行為の概要を公表することが明記されたほか、被害者に対する支援や救済が盛り込まれるなど、大きな前進を勝ち取ることができた。
県内では2019年にたつの市が条例に基いた実態調査をおこなったが、コロナ禍以前のことであり、現状の調査が必要である。2023年には尼崎市がやはり条例に基き、被差別部落住民に被差別体験などの聴き取りを含む実態調査を実施した。その分析・結果が待たれるところだが、こうした自治体での条例を根拠とした実態調査を求めていくことも重要である。
実態調査や相談体制の充実など、推進法に明記されている施策の具体的な実施を求めていくとともに、人権侵害救済法や包括的差別禁止法などの法整備を求めながら、部落解放運動の裾野を広げ、普遍化される闘争を展開していこう。
11月19~20日には、部落解放研究第57回全国研究集会が神戸国際展示場で開催される。兵庫県での開催は第37回全研(2003年)以来、実に21年ぶりのこととなる。県内の参加目標を達成し、集会の成功を勝ち取ろう。
組織の高齢化と後継者不足によって、支部の活動休止や同盟員数の減少が続いている。また女性の参画や役員登用も遅々として進んでおらず、抜本的な組織改革が求められている。県連規約や役員選挙規定の改定も含め、県連組織の整備・再編に着手していかなければならない。
さまざまな課題を確認し、今後の兵庫の解放運動を前進させるため、代議員の総結集で大会の成功を勝ち取ろう。
1月1日に能登半島を震源として大きな地震が発生し、甚大な被害をもたらしている。短期間に大規模な地震が何度も繰り返し起きたことで、家屋の倒壊、津波、山腹崩壊、市街地での火災などが発生、ライフラインは壊滅し、孤立集落が数多く発生した。
被害状況が日に日に明らかになる中、石川県では死者が236人、住宅の被害は、全壊・半壊・一部損壊あわせて4万1千棟以上が確認されている(いずれも1月25日時点)。断水や停電などが続いている地域も多く、石川県内の市町が設ける避難所では、1月25日時点でいまだ約1万人が避難生活を余儀なくされている状況だ。特に、断水の影響は大きく、インフラが整った場所への二次避難も始まっている。 今回の地震では、国や自治体の初動の遅れが目立った。私たちが経験した29年前の阪神・淡路大震災や2011年の東日本大震災の教訓はほとんど活かされていないことが指摘されている。
土砂崩れや積雪も影響し、揺れの強かった珠洲市や地震後の火災で大きな被害が出た輪島市などは特に、救助作業や被害状況の確認が思うように進んでいない様子も報道されている。半島で道路が寸断されるなど地理的な要因やボランティアの受け入れ調整を担う社会福祉協議会の稼働状況から、ボランティアの問合せや個人で支援物資を送ることを控えるよう求める旨の報道もされていたが、1月24日からは、七尾市や穴水町などを対象として災害ボランティアの募集が石川県ホームページの特設サイトで開始された。
多くの被災者が住居を失い、長い避難生活を余儀なくされることが予想される。これまでの経験を活かしながら、被災地のニーズに応える支援をおこなわなければならない。保健衛生、瓦礫撤去、物資配送、被災相談などの経験や技能を持った専門的なボランティアの存在も重要だ。また、これまでの災害で避難所での性暴力の実態も伝えられてきたことから、避難所での心身のケアにも注力するべきである。
災害のたびに起きることだが、今回もさまざまなデマが飛び交っている。今回の地震は人工的に起こされたとする根拠のない主張や「外国人窃盗団が能登半島に集結」といった偽の情報、被災者を装って救助要請する虚偽の投稿がSNS上で多く見られた。デマを広めないために、落ち着いて情報の発信元を確認し、安易に拡散しないことが大切である。
兵庫からは、阪神・淡路大震災以来、国内の災害救援活動をおこなう被災地NGO恊働センターが、七尾市を拠点としていちはやく救援活動を開始した。兵庫県連では現在、支援カンパを県内各支部から募集しており、今後は現地のボランティア受け入れ状況を見極め、被災地NGO恊働センターなど各団体と相談・連携しながら、県連としての支援活動をおこなっていく。県内各支部のみなさんにも物資や人材も含め、可能な限りの支援をお願いする。
2023年は、国際社会から人権上問題があると厳しく批判されている中での「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の「改悪」強行や、問題を多く含んだ「LGBT理解増進法」を制定するなど、日本が「人権後進国」であることを露見させた1年となった。
私たちの部落解放運動の課題を見ても、狭山再審闘争や「全国部落調査」復刻版出版事件裁判などの闘いが大きな山場を迎えている。兵庫県水平社がめざした「すべての人が尊敬される差別のない社会」の実現にむけ、再度、部落解放運動の強化を訴えたい。
2024年の部落解放運動の展望と課題を考える。
① 狭山第3次再審闘争の勝利にむけて
石川さんの不当逮捕から60年が経過した。インク資料の鑑定の実施と11人の鑑定人尋問を求める世論を広げ、署名運動を継続していくことが重要である。一昨年秋からスタートした東京高裁に事実調べを求める署名は現在、52万筆を超えたが、さらに、60万、70万、80万とその声を広げ、今年こそ私たちの手で再審の扉をこじあけよう。
② 「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の完全勝利へ
2016年から闘ってきた鳥取ループ・示現舎にたいする「全国部落調査」復刻版出版事件裁判では、昨年6月28日に東京高裁で判決が出された。
高裁判決では、憲法で認められた平穏に暮らす「人格権」が侵害されたとし、裁判例で初めて、原告らが求めていた「差別されない権利」が実質的に認められた画期的なものである。
裁判は舞台を最高裁に移す。完全勝利に向けて全力を傾注しなければならない。 近年、鳥取ループ・示現舎に触発されたように、被差別部落を晒す模倣犯が続出し、県内でも模倣犯による探訪動画によって多くの部落が好奇の目に晒されている。2024年度には県内すべての自治体でインターネットモニタリング事業が実施される見通しだが、今後もインターネット上の部落差別情報の動向を監視しながら、その差別性や問題点についての認識を共有化し、ネット上の部落差別の現実をねばり強く明らかにしていくとりくみを進めていこう。
③ 大胆な組織改革を
部落の人口減少や人口流動化、超少子高齢社会が進んでいるが、兵庫もまた例外ではない。孤立や社会的排除をなくすため、周辺地域住民を巻き込んだ人権のまちづくり運動を各地で展開していかなければならないが、どの地域でも運動の担い手不足が深刻な問題として横たわっている。次代の運動を担う人材の育成が急務である。県連としても時代に合った組織となるよう規約改正をおこない、ブロック再編や青年・女性活動家の役員定数増やブロック選出基準の変更など、具体的なビジョンを持った大胆な組織改革をおこなわなければならない。部落解放同盟の基礎組織が支部であることは言うまでもないが、部落解放運動に接続する新たな方法も考えていくべきである。今後の組織の在り方についての議論を活発化させよう!