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県連は12月17日、64期支部長研修会をのじぎく会館で開催する。
今年は赤井隆史中央書記長を講師に迎え、部落差別の現状と部落解放運動の今後について学習を深める。
課題の一つは、狭山第3次再審闘争の勝利に向けた運動である。昨年秋から取り組んできた東京高裁に事実調べの実施を求める緊急署名は、今年5月末で個人・団体を合わせて約52万筆が集まった。無罪を勝ち取るカギとなるのは事実調べである。この世論をさらに大きくし、事実調べを必ず実現させることが重要である。今年3月の袴田事件の再審開始決定は、狭山事件の再審にむけて大きな希望となった。検察は「鑑定人尋問は必要ない」と主張しているが、「次は狭山だ」と世論の声で裁判所を動かし、再審の扉を開かせよう。
二つめは、「全国部落調査」復刻版出版事件裁判のとりくみである。今年6月28日に東京高裁が出した判決は、原告が主張してきた「差別されない権利」を実質的に認めるものであった。憲法13条「幸福追求権」と第14条1項「法の下の平等」の趣旨に鑑みて「法的に保護された利益であるというべき」とされた。被差別部落の地名リストの公表自体が部落差別の拡大・助長になることを認めたことは大きな前進である。しかし、弁護団が「現行の法律での限界」ともとらえているのは、「原告が存在しない」という理由で10県において差し止めが認められなかったからだ。すべての県での差し止めを求め、完全勝訴しよう。
三つめは、インターネット上で部落を晒す行為への抗議と削除のとりくみである。鳥取ループ・示現舎が動画サイトYouTube上に投稿していた部落を晒す「部落探訪」の動画の約200本が昨年11月、サイトの親会社であるGoogle社のヘイトスピーチポリシー規定によって削除された。運動団体や行政が地方法務局を通じて削除要請を積み重ねてきたことや、オンライン署名サイトでの署名が2万8千筆集まったことも削除の後押しとなった。世界的な企業が差別動画の削除に動いたことは意義のあることだが、類似の投稿が多数あることや、鳥取ループ・示現舎が別サイトを使用して動画を掲載し続けていることなど、問題は解決していない。差別情報の削除を実現する法整備を求めていくとともに、新たに大阪でスタートした「部落探訪」削除裁判の勝利もめざそう。
全国的にも同盟員は減少し、県内でも存続が難しい支部が続出しているが、依然として部落差別の厳しい実態がある中、支部活動は変わらず重要である。支部長は同盟員のさまざまな相談に応じるために、この研修会に出席し、部落差別の課題を学習していただきたい。そして日々の相談活動から見える課題を明らかにし、必要な施策を求めることにつなげていかなければならない。支部長研修会で部落問題の現状を再確認し、運動の強化につなげよう。
兵庫県連は11月4日に、兵庫県水平社創立100周年記念集会をラッセホールで開催する。
兵庫県水平社の創立は、これまで神戸水平社創立の1922年11月26日としてきたが、兵庫県水平社協議会が設立され、県内の水平社を統一する連合会本部が設置されたのは1923年であり、同年10月に水平社兵庫県総会が開かれていることから、兵庫県水平社の創立をこの年とみなし、今年はその年から100年の節目である。
1922年3月の全国水平社創立以降、まさに遼原の火の如く水平社の組織は全国に広がり、1923年末には、3府21県に300近く、兵庫県内でも40を超える水平社が組織された。
兵庫の水平運動は、加東郡(現在の加東市)での小作争議、神戸における労働争議や、淡路、播州地域の農民運動、姫路市の北中皮革争議など、部落差別に対する闘いだけではない。労働組合や農民組合内での差別にも果敢に立ち向かい、広範な大衆を組織しようとするものだった。
兵庫県水平社は、組織の刷新や改組を経たのち、挙国一致体制に飲み込まれていき、1940年代に自然消滅した。しかし、差別の原因を部落側に求めた部落改善運動を拒否し、同情融和的な運動との決別をすすめた水平社の闘いが、兵庫においても大きなうねりとなったのは事実である。
今日の部落解放運動は、こうした水平社の闘いが原点となっている。
水平社創立から100年たった現在も、部落差別をはじめさまざまな差別が横行している。
部落差別に関しては、今でも兵庫県連で結婚差別の相談を受けた案件があり、2021年には身元調査につながる戸籍謄本等不正取得事件が発覚した。匿名で投稿できるインターネット上の部落差別も深刻な状況だ。露骨な差別は「減った」かもしれないが、形を変え、見えにくくなっていることも事実である。学校では部落問題学習が十分になされず、部落問題を知らずに育つ子どもたちが増えていることなど、教育において直面する課題も山積している。
狭山再審闘争や「全国部落調査」復刻版出版事件裁判などの闘いも山場を迎える今、先人たちの闘いの上に成り立つ部落解放運動を継続するにあたって、「反差別」のウィングをさらに広げ、さまざまな人権課題に真摯に取り組まなければならない。「自分たちのため」だけの運動をしていないか、点検しながら前進することが重要である。
また、組織の中にも差別があることを忘れてはならない。例えば、あらゆる組織やコミュニティで女性蔑視の意識は根深く存在し、「性は多様である」という認識も不十分である。部落解放同盟もそのうちのひとつではないだろうか。水平社がめざしたすべての人が尊敬される差別のない社会を実現するために、この視点をなくしてはならない。
さまざまなマイノリティに勇気を与えた水平社宣言を軸に、未来に向けた希望ある運動を展開しよう。
「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の控訴審で6月28日、東京高裁が「差別をされない権利」を認める判決を出した。
この裁判は、「全国部落調査復刻版」を鳥取ループ・示現舎が出版しようとし、そのデータと「部落解放同盟関係人物一覧」をネット上に掲載したことについて、被差別部落出身者と部落解 放同盟が、出版差し止めとネット上からの削除、損害賠償を求めた裁判である。
判決では損害賠償の増額や出版差し止め範囲の拡大など、地裁判決を上まわる判断がなされた。すべての都府県が差し止めの対象とならなかったことなど問題は残るが、地裁判決から前進したことは評価したい。
特に、地裁判決で認められなかった「差別されない権利」を実質的に認めたことが大きく、弁護団は「今後のあらゆる反差別の闘いに活用できる判決」と評価している。
高裁判決は、憲法13条「幸福追求権」と14条1項「法の下の平等」の趣旨に鑑みて、「人は誰しも、不当な差別を受けることなく、人間としての尊厳を保ちつつ平穏な生活を送ることができる人格的な利益を有するのであって、これは法的に保護された利益であるというべき」としている。被差別部落の地名リストの公表自体が部落差別の拡大・助長になることを認め、平穏な生活を侵害されることになる、と判断したのだ。
部落差別の実態についても東京高裁は、地裁判決より踏み込んで認定した。部落差別解消推進法の制定経緯や法務省の意識調査、近年発生した戸籍謄本等不正取得事件、さらにはネット上の部落差別の実態も取り上げた。興味や関心で閲覧した場合でも、「差別をあおる情報に接することにより、差別意識を植え付けられる可能性がないとはいえない」と指摘している。
弁護団は、今回の判決を「現行の法律での限界」ともとらえている。高裁は、一審の差し止め範囲の判断基準を見直し、新たに6県を差し止め対象に追加したが、原告が存在しないという理由で、10県で差し止めを認めなかったからだ。しかし、被差別部落の地名リストの公表は差別の助長となることを今回の判決は認めており、除外された10県は公表してもよいというわけではない。
原告は7月6日、すべての都府県においての差し止めと、部落解放同盟の業務遂行権などを求めて上告、舞台は最高裁へと移る。
しかし、被告は別サイトで「部落探訪」動画を掲載し、全国の被差別部落の地名、個人宅などを晒し続けている。Google社のヘイトスピーチポリシー規定によってYouTube上の「部落探訪」の約200本が削除された事実は大きいが、この状態は、彼らの行為の差別性を個別の事象でしか問えない現在の法制度の限界を浮き彫りにしている。
部落差別解消推進法の施行以降、兵庫県内では7つの自治体で部落差別解消や人権に関する条例が制定されている。この裁判闘争の完全勝利と、県内各自治体での条例制定を勝ち取り、包括的な差別禁止法の制定を実現しよう。
8月15日で敗戦から78年を迎える。戦争・被爆体験者は減少・高齢化し、戦争の悲惨さが直に伝えられる機会は少なくなっている。平和への歩みを止めてはならないが、政府は、「戦争のできる国」づくりに向けた準備を進めている。
昨年12月の安全保障関連3文書の閣議決定をうけて、十分な審議もないまま今国会で成立させた「防衛財源確保法」「防衛産業基盤強化法」は、その名の通り、防衛費の財源確保と防衛産業の基盤強化のために作られたものだ。
「非核三原則や専守防衛の堅持、平和国家としての我が国の歩みを変えるものではない」と岸田首相は説明する。しかし、安保関連3文書で「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を容認したこと、倍増していく防衛予算や関連予算を確保するための法律整備などの動きを見れば、それが詭弁であることは明らかだ。
また、米中対立や「台湾有事」が懸念される中、米軍と一体となった敵基地攻撃能力の強化が進められている。今年1月の「2プラス2」(日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会)では、中国に対抗するため、敵基地攻撃能力の共同運用を確認した。「有事の際には標的になる」との不安や反対の中、2016年からは南西諸島に自衛隊駐屯地が次々に開設され、ミサイル部隊の配備も進められている。
こうした動きを注視し、反対をしていかなければならない。
5月に広島で開催されたG7サミットでは、「核兵器のない世界」をめざすことが合意された。各国の首脳が、広島で原爆資料館を訪問し慰霊碑に献花したことは意義があるとの報道もあったが、G7には核保有国も名を連ね、議長国の日本も核兵器禁止条約を批准していない。「核兵器のない世界」をめざすと本当に思えるだろうか。
サミット首脳声明では、ロシアへの強い非難とともに、制裁措置の強化も謳われた。ロシアによるウクライナ侵攻は決して許されないが、対ロシアの構図を強化する方策は、争いを激化させていく要因ともなりうる。私たちは、戦争を終わらせるためのとりくみに力を注がなければならない。
今、毎夏に県内各地を走り抜ける反核平和の火リレーがおこなわれている。8月には広島と長崎、そして福島で原水禁大会が開かれる。福島大会は広範囲の放射能汚染をもたらした2011年の福島第一原発事故後の2012年から開催されるようになった。5月に脱炭素に関連する法律が改正され、原発の60年超の運転延長を可能にするなど、原子力の積極活用へ転換する内容が盛り込まれた。原発事故を二度と起こさないためにも、「原発ゼロ」を求める声を強めよう。
世界で唯一の被爆国である日本に暮らす私たちは、「戦争は最大の人権侵害」であることをあらためて確認し、核兵器のない平和な社会をめざさなければならない。そして、反戦・平和のとりくみに県連も奮闘し、平和運動を前進させよう。
5月に広島でおこなわれたG7サミットでは「核兵器のない世界」を究極の目標とし、「軍縮・核不拡散の取り組み強化へ具体的措置を取る」と強調された。しかし、その一方で、各国が保有する核兵器について「防衛目的のための役割」「戦争や威圧を防止すべきときとの理解に基づいている」と、抑止力として使用することを正当化した。「核兵器のない世界」をめざすという日本だが、2023年度の防衛費は6兆8219億円と過去最大である。今国会でも「防衛財源確保法」や「防衛産業基盤強化法」を成立させるなど、「戦争のできる国」へと突き進んでいる印象しかない。これらの法律は、この国に暮らす人々に将来にわたり新たな負担を強いるものでもある。
現在、食料品や日用品、燃料などさまざまな商品・サービスが値上がりし続け、家計を圧迫している。政府はこの物価高への対策として、電気料金などの負担軽減や低所得世帯向けの子育て支援などをおこなうとしているが、膨大な防衛費と比較すれば微々たるものである。人々の生活や社会保障など二の次になっていると言わざるを得ない。
これらの状況は、非正規雇用の多い部落の青年にとっても大きな影響をもたらすものである。
このような情勢のなか、県連青年部は7月23日、加古川・北別府公民館で第30回大会を開催する。結成から30年という節目の今年、現在の青年部の状況を見つめたうえで、これからの解放運動を担う青年部活動を展望する機会としたい。
第30回大会終了後の学習会では、加古川の北別府で100年前の1923年に起きた兵庫の水平社運動を代表する闘いである別府村事件について学ぶとともに、辻川智徳部長を中心としたメンバーが解放学級に通ってきた頃を振り返りながら、これまで取り組んできた思いを語り、これからの青年部活動について考える。
県連青年部では現在、4ブロックから6人の常任委員を選出している。年々その数も少なくなってきており、それぞれに仕事などで忙しい中での活動によって厳しい側面もあるが、いまだ残る部落差別を許さないという思いを軸に、ネットワークを大切にしながら引き続き活動に取り組んでいかなければならない。
県連青年部はこれまで、高校生や青年が、私生活や運動との関わり方、支部での活動などについて抱える悩みを共有でき、相談できる居場所としての機能を果たそうと模索を続けてきた。この姿勢を維持しつつ、次世代育成につながる動きにも力を入れたい。特に、解放学級をはじめとする各地の子どもの居場所づくりについて調査し、交流会や学習会の企画へとつなげていくことを検討している。
また、支部に所属しているかどうかを問わず、部落問題をはじめとするさまざまな人権課題に関心をもつ青年や高校生が参加しやすい学習会や交流会など、その仕組みを工夫することも重要である。
兵庫の青年部活動を前進させるため、青年部大会に結集しよう!
岸田政権は、5月8日から新型コロナ感染症を感染症の分類の2類相当から5類へと移行した。5類は季節性インフルエンザや麻疹(はしか)などと同じ分類で、行動制限などもなくなったが、ウイルスの性質が変わったわけではない。
移行で大きく変わることの一つは、医療費負担である。自治体による無料のPCR検査や検査キットの配布も終了となる。無料だった医療費は保険適用で1割から3割の自己負担となる。急激な負担増を避けるため、治療薬や入院費について「一定期間は公費支援を継続する」が、ひとまず9月末までの措置となる。
これまで感染者数急増のたび、保健所と医療機関のひっ迫した状況が伝えられてきた。背景には、公立・公的病院の再編・統合や保健所の統廃合が進められてきたことがある。1989年に全国848所あった保健所は2020年には469所とほぼ半減した。厚生労働省は5類移行後、「幅広い医療機関において受診可能」と言うが、この状況で本当に可能なのか。
感染者数の把握方法も、毎日の「全数把握」から、全国約5000の医療機関からの報告をもとに1週間ごとに集計・公表される「定点把握」へと切り替わった。
WHО(世界保健機関)は2020年1月から出していた新型コロナに関する緊急事態宣言を5月5日に終了した。しかし同時に「新型コロナは心配ないというメッセージを送ってはいけない」「ウイルスは命を奪い続け、変異も続けている」と、警戒を怠らないよう呼びかけている。
倦怠感や息切れ、嗅覚障害などの後遺症に悩まされ、就労や就学が困難になる人も少なくない。イギリスで2021年5月に10万人を対象にした調査では、感染した1万3000人のうち20%を超える約2800人に、発症から12週間以上経っても後遺症とみられる症状が出ていた。新型コロナを楽観視することは非常に危険である。
5類への移行に先立って、3月からマスク着用が「個人の主体的な判断」に委ねるとされた。医療機関・高齢者施設への訪問時、混雑した電車・バス乗車の際には着用が推奨されているものの、そうした場面でも「自分は大丈夫だからマスクをしない」という人も増えている。しかし、新型コロナは発症前の無症状のときから感染性のウイルスを排出していることが明らかになっている。マスクは自分を守るためであると同時に、周りに感染を広げない、とりわけ高齢者や基礎疾患を持つ人など重症化リスクを持つ人を守るためのものだ。感染拡大は今後も続くと言われる中で、マスク着用や手指消毒、換気、空気清浄機設置など、基本的な感染対策をもう一度見直さなければならない。
コロナ禍の3年で明らかになったことの一つは、経済や効率を重視した政策によって医療現場がひっ迫し、とりわけ弱い人へとしわ寄せが来ているということだ。感染しても医療につながることができない状況が当たり前に発生し、7万4000人余りの命が失われた。この3年の教訓を生かし、早急に医療態勢を立て直すことが必要である。
一九六六年に静岡県で一家4人が殺害された事件で、死刑が確定した袴田巌さんの再審が決まった。3月13日の東京高裁の再審開始決定後、検察は特別抗告を断念した。
袴田事件の再審開始決定の決め手は、みそ工場のタンクから見つかった衣類の写真などの証拠開示と事実調べにより、証拠がねつ造された可能性が極めて高いとされたからである。
3月21日に開催された「第7回狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西」で狭山弁護団の指宿昭一弁護士は「確定判決の証拠がねつ造された可能性が高いと東京高裁で示されたことは大きい」とし、検察側の特別抗告断念についても「特別抗告をするなという世論が大きく影響した」と話した。
狭山事件でも、確定判決の証拠である被害者の物とされる万年筆について、ねつ造が指摘されている。万年筆が二度の徹底した家宅捜査の後、石川一雄さん宅の鴨居で「発見」されたという経緯も不自然で、万年筆には石川さんの指紋も被害者の指紋もなく、インクの色も当時被害者が使っていたものとは違う。
弁護団はこれまで、250点を超える新証拠を提出し、石川さんの無実を明らかにしてきた。昨年8月29日には新証拠を作成した11人の鑑定人尋問と、裁判所による万年筆インクの鑑定を求めた事実取調請求書を提出した。
これに対し検察は、新証拠には新規性も明白性もなく再審開始の理由にならない、弁護側鑑定人の尋問も、裁判所による鑑定も必要ないと主張している。
これまでも弁護団が開示を求めた証拠や、裁判所も開示を検討するよう促した証拠について「不見当」「開示に応じる必要はない」などとして、不誠実な対応を取り続けている。
これまで再審無罪を勝ち取った足利事件、布川事件、東住吉事件などでは証拠開示や事実調べが再審開始のカギとなっている。再審無罪を勝ち取るためには、何としても裁判所に鑑定人尋問などの事実調べを実現させることや、さらなる証拠開示が非常に重要である。
昨年9月から全国でおこなわれている鑑定人尋問実現を求める署名は50万筆を超え、多くの声が裁判所に届けられている。さらに世論の声を大きくしていくことが大切であり、そのためには1人でも多くの人に狭山事件を知ってもらうこと、署名などのとりくみを一層すすめていく必要がある。
今、第3次狭山再審闘争は最大の山場を迎えている。 袴田事件の再審決定は狭山事件の再審にむけて大きな希望となった。「次は狭山だ」と、世論の声で裁判所を動かし、鑑定人尋問を実現し、再審の扉を開かせよう。
このような重要な局面のなか、今年も5月23日に東京・日比谷野外音楽堂で狭山事件の再審を求める市民集会が開催される。1人でも多く結集し、世論の力で大野勝則裁判長に、鑑定人尋問などの事実調べ、裁判所の鑑定実施と再審開始を求めよう
5月20日から21日にかけて、部落解放第66回全国女性集会が姫路市で開催される。全国女性集会が兵庫で開催されるのは、実に23年ぶりのことである。
今年は、兵庫県水平社の創立100年という節目である。多くの女性たちも水平社に参加し、婦人水平社が結成された。当時の露骨な部落差別に対して、いのちと生活を守る女性たちは、部落差別を生み出す社会そのものを変革する闘いが重要だとして、生活改善や仕事保障など、人権と平和の確立に向けた闘いの中で重要な役割を担ってきた。戦後の部落解放運動においても、女性の活動が運動を前進させる大きな原動力となった。
しかし、今日においても差別身元調査事件などで明らかなように、部落に対する差別意識が根強く存在し、女性差別撤廃に向けた課題も山積している。
部落の完全解放のためには、女性差別の撤廃は不可欠だ。
部落解放同盟中央本部では、男女平等社会実現基本方針(第2次改訂)が2016年の第73回全国大会で決定された。組織内の目標として掲げられているのは、「何が女性差別かを見抜く力を育むこと」「意識的に女性を意志決定機関に参画できるように積極的差別是正措置を組織運営に取り入れていくこと」「男は仕事、女は家事・育児・介護、というような意識的につくられてきた既存の規範を新たなものに作りかえること」である。
兵庫県連においては、2021年の第62回大会で男女平等社会推進本部を設置して以降、学習会のとりくみは進めてきたが、女性が意志決定に参画しやすい組織であるとはまだまだ言えない。基本方針に基づいたとりくみの強化をはかろう。
また、組織の枠組みを整備するとともに、「性別役割分業」の意識が根強くあるということを念頭におき、男性の意識変革はもちろん、女性の意識も変革していかなければならない。「男は男らしく、強く、たくましく」「女は女らしく、やさしく、かわいく」などの性別によって固定されたそれぞれの意識を変えていくことも重要だ。
地域を基盤として活動を展開する部落解放同盟にとって、ジェンダー平等の組織建設は地域コミュニティの在り方にも直結する。女性の視点から見た「人権のまちづくり」運動の活性化に向けて、しっかりと取り組んでいこう。
県連女性部では、県内すべてのブロックからの常任委員選出が難しい状況が続いているが、女性部の活性化をめざして、5月の全国女性集会の開催を受け入れた。集会では、男女平等社会推進本部の設置までの経緯や学習会など、兵庫県連のとりくみ報告もおこなう。女性差別を撤廃するために各地のとりくみに学び、議論を深めながら、女性の力を結集させて姫路全女の成功をめざそう!
3月26日、丹波篠山市において、部落解放同盟兵庫県連合会第64回大会を開催する。1年間の活動を総括し、今後1年の運動方針を決定する重要な機会である。代議員の総結集で大会の成功をかちとろう。
昨年は全国水平社創立100周年だったが、今年は兵庫県水平社が創立されて100年を迎える。融和主義を否定し、「人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする集団運動」を起こした輝かしい歴史は、同時にさまざまな弾圧を経験し、犠牲者を出した苦難の道でもあった。兵庫の部落解放運動の経験と成果を明らかにし、次世代の育成に力を注ぎながら、運動の発展と継承をめざそう。
岸田政権は昨年12月、「安全保障関連3文書」を閣議決定し、戦争のできる国づくり、憲法改悪を推し進めようとしている。また新自由主義政策による「弱者」切り捨て、社会の対立と分断が進むなか、長期化するcovid-19(新型コロナ感染症)の拡がりにより、差別や貧困、格差の問題は深刻化している。そのなかで被差別部落の生活はより厳しい状況にあると言える。
鳥取県同和対策協議会が2020年に県内10地区の住民を対象に実施した「被差別部落住民生活困りごと」調査では、深刻な生活困窮、差別被害の実態、介護をはじめとする行政サービスが届いていない状況が明らかとなっている。2016年に大阪府連が実施した「暮らしのアンケート」でも単身高齢世帯割合の高さや、公営住宅などの借家が多いという居住実態、公営住宅に集住しているにも関わらず、必要な支援が届いていないという結果が出ている。
兵庫県たつの市が2019年に実施した生活実態調査でも同様の結果が出ていることから、都市部、郡部の如何を問わず、県内の多くの部落で同様の課題を抱えていることが推察される。
こうしたなかで、今こそ、同盟員と部落大衆の要求にしっかりと耳を傾けることが大切である。そのためには県連・ブロック・支部の役員が地域の人たちから信頼される誠実さ、運動を牽引する鋭い洞察力と理念を持つことが必要である。課題は山積しているが、2016年施行の部落差別解消推進法(以下、推進法)の具体化とさらなる法整備は特に重要である。教育・啓発の充実、相談窓口の強化、実態調査の実施など、法の具体化とともに、推進法改正、さらには差別禁止法や人権侵害救済法などの包括的な人権の法整備を求めることが必要だ。
また、無実の石川一雄さんの不当逮捕から60年になる狭山の闘いは最大の山場を迎えている。なんとしても今年、再審開始を勝ち取ろう。そして、「差別の商人」鳥取ループに代表される差別の確信犯との闘いにも勝利しなければならない。4月には統一地方選挙がおこなわれる。平和を守り、差別を許さず、さまざまな人権課題を地域で実現していくために、組織内候補はもとより、県連推薦候補者の全員当選をめざそう。
ロシアによるウクライナ侵略はいまだに激しい戦闘が続き、米中対立や朝鮮半島情勢の緊張も深まるなど、国際情勢もますます不安定なものになっている。岸田政権は、ウクライナ侵略戦争の長期化や「台湾有事」などを利用して、本格的な「戦争をする国」づくりをすすめようとしている。昨年12月には、「国家安全保障戦略」などの安保3文書を閣議決定し、歴代政権が憲法違反としてきた「敵基地攻撃能力」の保有を「反撃能力」と言い換えて明記、戦後安全保障の根幹である「専守防衛」を放棄し、軍事的な対米従属をいっそう深めている。
昨年、全国水平社創立から100年を迎えた私たちの闘いも、戦争協力を余儀なくされた痛苦の歴史を持つ。今こそ「戦争こそ最大の人権侵害」であることをしっかりと訴え、憲法改悪や軍事大国化に反対するとりくみを強化していかなければならない。また国内の人権状況を見ても、昨年に京都のウトロ地区への放火事件とコリア国際学園への放火事件に対する判決が出されたが、両事件ともに明らかに在日コリアンを狙ったヘイトクライムであるにも関わらず、その量刑は決して重いと言えるものではなかった。これは日本に差別や人権侵害に対応する法的な仕組みがまったくないからである。
鳥取ループ・示現舎に対する裁判闘争でも明らかなように、裁判は時間的にも財政的にも大きな負担を強いられる。ネット上の対策も含め「人権救済」や「差別の禁止」規定を盛り込んだ法律の早急な制定が必要である。
今年は4月に第20回統一地方選挙がおこなわれる。県会議員選挙と神戸市会議員選挙が4月9日、市町会議員選挙が4月23日投開票で実施される。また姫路市、明石市、芦屋市、福崎町の首長選挙も同23日に投開票される。市町会議員選挙がおこなわれるのは、神戸市の他、姫路市、明石市、芦屋市、西宮市、伊丹市、宝塚市、相生市、三木市、小野市、播磨町、太子町である。この選挙は、県内の自治体において、人権施策を推進していくために重要なとりくみとなる。
県内では、部落差別解消推進法の施行後、7つの市町で部落差別解消条例や人権関連条例が制定された。今後も各市町で条例制定をめざすが、部落解放運動の要望を各議会に届け、さまざまな人権課題の解決を地域で実現するためには、今後、地方自治体議員の役割はますます重要となる。本人通知制度やインターネットモニタリング事業も「ひょうごヒューマンライツ議員の会」に結集する県会・市町会議員の協力が大きな力となり、県内多くの自治体で実施されるようになった。地方議会の役割をあらためて認識し、部落差別撤廃にむけた政策を実現していかなければならない。組織内議員を中心に、部落解放運動の前進をめざし、県連が推薦する人権派候補者の全員当選を勝ちとるために全力で選挙闘争に取り組もう!
昨年、水平社創立100年を記念して映画「破戒」が制作された。主人公の瀬川丑松を演じる間宮祥太朗さんは静かな演技で、出自を暴露されるのではないかという部落出身者の不安、苦悩と葛藤を見事に表現した。差別からの解放を求めた100年の闘いを経てなお、そうした葛藤は続いているし、現在も部落差別は日本社会に厳しく存在している。今年は兵庫県水平社の結成から100年の節目の年を迎える。兵庫の部落解放運動のすべてを振り返ることはできないが、その歴史は幾度も分裂を経験し、紆余曲折しながらの道程であった。2023年を迎え、それらの教訓も踏まえながら、あらためて2023年を展望し、課題を提起する。
①狭山第三次再審闘争に勝利すること
狭山闘争は文字通り最大の山場を迎えている。狭山再審弁護団が昨年8月に東京高裁に提出した「11人の鑑定人証人尋問と万年筆のインクをめぐる鑑定」を求める事実調べをなんとしても実現させなければいけない。鑑定人尋問・鑑定の実施を求める緊急署名は10月末までの第一次集約で10万筆を達成したが、全支部の一層の奮闘を要請するとともに、ネット署名にも取り組もう!
②「全国部落調査」復刻版出版裁判に勝利すること
2021年9月の東京地裁判決は「半ばの勝利」である。控訴審では、私たちが主張する「差別されない権利」を認めさせ、差別の商人=鳥取ループ・示現舎に完全勝利しよう!昨年11月30日、You Tubeが鳥取ループの「部落探訪」動画約200本を削除した。これまで多くの機関や自治体が削除要請しても消えなかったことからすれば画期的なことである。
これは、モニタリングに取り組む団体の粘り強い削除要請や短期間で3万筆近くを集めたネット署名など、部落差別解消に向けた多くの人たちの地道なとりくみが積み上げた成果である。引き続き、法務局やプロバイダーへの削除要請を強化し、インターネット上での差別動画・書き込みへの法整備を求め、差別禁止法の制定をめざそう!
③同盟員の生活に寄りそう日常活動を強化すること
全国的に部落の人口減少や人口流動化がおこっており、超少子高齢社会が進んでいるが、兵庫もまた例外ではない。孤立や社会的排除をなくすため、周辺地域住民を巻き込んだ人権のまちづくり運動を創造しなければならない。
そのためにはまず各支部・ブロックの日常的な世話役活動が大切である。ブロック・支部役員が先頭に立って地域で信頼される活動を展開しよう!今年は4月に統一地方選挙がおこなわれる。部落解放・人権政策確立のためには人権派議員の拡大が不可欠である。一人でも多くひょうごヒューマンライツ議員の会に繋がる議員の当選をめざそう。