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今後の政治の方向性を決定する重要な闘いだと位置付けてきた衆議院選挙は、自民党が公示前より議席を減らしながらも、絶対安定多数の261議席を獲得するという結果になった。
県連が推薦した候補者は1区の井坂信彦さん(立憲民主党)、8区の中野洋昌さん(公明党)が選挙区で勝利、6区の桜井シュウさん(立憲民主党)は比例復活当選したものの、3区、5区、7区、10区では惜敗するという非常に残念な結果となった。
何より私たちが警戒しなければならないのは、日本維新の会(以下、維新)が大きく躍進したということである。維新は兵庫9選挙区で候補者を擁立。選挙区で当選したのは6区だけであったが、その他の8候補者すべてが比例で復活当選した。比例代表でも前回2017年衆院選の8議席から大きく伸ばして25議席を獲得。維新は公示前の11議席から4倍近い41議席となった。
元フジテレビアナウンサーの長谷川豊による部落差別発言事件(2019年)は記憶に新しいが、彼も2017年の衆院選では維新公認で出馬、2019年参院選でも維新から立候補を予定していた。今回の選挙で当選した維新議員にも、差別的言動が問題視されている人物が数多く存在する。
大阪9区で再選した足立康史は「朝日新聞、死ね」や「立民は北朝鮮の工作員」などの暴言やデマを撒き散らし、国会でも数々のデマや暴言で6回も懲罰動議にかけられている人物だ。東京1区で比例復活当選した小野泰輔は、東京都知事選挙に立候補した際に、百田尚樹や高須克弥らがTwitterで流すヘイト発言をリツイートしていたことが問題視されているし、地元兵庫7区で落選し比例復活した三木圭恵も「夫婦別姓は家族の崩壊に油を注ぐ」と発言している。
また維新の幹事長である馬場伸幸は、選挙公約に「二重国籍の可能性のある者が国会議員となっていた事例に鑑み、外国籍を有する者は被選挙権を有しないことを定めるとともに、国政選挙に立候補する者は自らの国籍の得喪履歴の公表を義務づける」などという人種差別的主張を恥ずかし気もなく盛り込んだ。これらの事実を見れば、個人の資質の問題はもちろんのことだが、これらの議員に反省を促したり、指導することもない党の責任も重大である。
11月16日の神戸新聞に「兵庫維新、次の狙いは首長選「大阪と肩を並べる組織に」来年の西宮・尼崎で擁立目指す」という見出しが躍った。維新は来年実施される西宮市、尼崎市の市長選挙にも独自候補者を擁立する考えを示している。
大阪維新の会の立ち上げから11年。兵庫でも維新の地方議員は着実に増えてきている。大阪で体制を固めてきた維新の次の標的が兵庫であることは間違いない。
私たちは対立と分断を煽り、新自由主義路線を突き進む維新の政治をこれ以上兵庫に定着させないという強い覚悟を持って、来年の参院選をはじめとする各級選挙に臨まなければならない。
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県連は、兵庫県に対する、部落解放・人権施策の実施についての要望を執行委員会でとりまとめ、9月24日、県に提出した。人権侵害救済および人権啓発、同和行政・人権行政の推進、男女共同参画社会の実現、労働・就労支援、生活、産業、農業など9項目。
要望書は毎年提出しているが、今回は知事が変わってから初めての要望となる。兵庫県は、インターネットモニタリング事業や事前登録型本人通知制度など、全国的にも進んだ人権施策を実施している。県連として、こうしたこれまでの人権行政の継続を求める。
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「部落差別解消推進法」の施行から5年。都道府県レベルでは現在、大阪、熊本、福岡、香川、徳島の5府県で差別規制を盛り込んだ条例、和歌山県で部落差別解消推進条例が成立している。同様の条例が兵庫県にも必要である。
県内でも5市町で制定されているが、県内各自治体でのさらなる相談体制の充実、教育・啓発の推進、実態調査の実施など「推進法」の具体的な活用が求められている。市町に対する働きかけなど、県の人権担当組織の果たす役割は今後ますます重要である。職員研修の強化とともに、体制と機能の充実を求めたい。
「推進法」には「部落差別の実態に係る調査」が明記されている。政府への働きかけと同時に、兵庫県でも、独自に県内の実態調査を実施し、課題を明らかにすべきである。
生活に関する課題については、隣保館の役割が重要である。地域の福祉推進活動などを一層充実させるため、隣保館への指導・助言、及び予算確保を国に要望することなどを求めたい。
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ネット対策も重要である。兵庫県が2018年から開始した「ヘイトスピーチ等・インターネットモニタリング事業」は、悪質な差別書込みに対する抑止効果が期待される。また、この事業を県が市町担当職員の研修の場として位置付けていることを高く評価する。県内29市12町のうち25市8市町(10月末時点)でも導入されているが、県が導入自治体と削除方法などについて情報共有する機関を設置することを求めたい。
今年、丹波篠山市と地元自治会が差別動画の削除を求める仮処分を申し立て、神戸地裁柏原支部が認めたことが報じられた。これまでの自治体のとりくみの中で、実効性ある対策が取られたものと評価する。
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戸籍等の不正取得を防止する有効な手段である「本人通知制度」では、 県が「本人通知制度導入の手引き」を作成、市町への指導をおこなってきた。その結果、28市
11 町で実施されている。しかし、不正取得は依然として多くある。
県はこれまでも国に対し「人権擁護のための早急な法整備」を求めてきた。しかし、インターネット等を悪用しての差別情報の流布、差別事件も多発している。差別規制や被害者救済などの法整備、差別事件の防止策、「地方人権委員会」の設置等、一層働きかけを強めることを求めたい。
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以上のような認識のもと、県連は県への要望をおこなう。各ブロック・市連協でも行政交渉・要望行動を実施してもらいたい。
自民党は、野党が求める新型コロナ対策補正予算のための臨時国会召集を拒否(憲法違反)したまま、総裁選挙をおこなっている。連日テレビを占有、無理やりお祭り騒ぎに付き合わされているようで辟易する。
本紙が発行時には決まっているだろうが、河野太郎、岸田文雄の2人が有力と言われている。原発政策での変節(河野)、「森友学園問題の再調査はしない」発言(岸田)など、どちらもまったく信用ならない。さらにひどいのは、ナチス礼賛本に推薦文を寄せ、「さもしい顔して貰えるもの貰う国民ばかりだと国が滅ぶ」と平気で言う高市早苗だ。
自民党総裁が誰になろうと、自公政治を清算し政権交代するため、秋の第49回衆議院選挙を人権と平和、民主主義の確立をめざす重要な闘いと位置づけ、全力で取り組まねばならない。
衆議院総選挙に向け、立憲民主党を中心に野党共闘が進められている。9月8日には、立憲民主党、社民党、れいわ新選組、共産党の野党4党が、野党共闘を呼びかける市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」との政策合意に調印した。政策の柱は、①憲法②コロナ対策③格差是正④エネルギー⑤ジェンダー平等⑥行政の透明化の6項目。
今回は特に、新自由主義政策がもたらした貧困と格差の是正、深刻化する差別排外主義を許さず、共生社会をめざすことを鮮明に訴えることが重要である。
9月13日発表の立憲民主党の政策「多様性を認め合い『差別のない社会』へ」では①選択的夫婦別姓制度の早期実現 ②LGBT平等法の制定/同性婚を可能とする法制度の実現
③DV対策や性暴力被害支援など困難を抱える女性への支援 ④インターネット上の誹謗中傷を含む、性別・部落・民族・障がい・国籍、あらゆる差別の解消をめざすとともに、差別を防止し、差別に対応するため国内人権機関を設置
⑤入国管理・難民認定制度を改善・透明化するとともに、入国管理制度を抜本的に見直し、多文化共生の取り組みを進める―の5項目が盛り込まれた。
枝野幸男代表は記者会見で「本当に基本的な、重要なテーマでありながら長年にわたって自民党が多数の状況の中では実現できてこなかった。だからこそ、政権をお預かりしても簡単ではないが、国民の皆さん、そして他党の皆さんなどにもご協力をいただき、必ず実現するという強い意志で進めていきたい」と語った。人権課題は本来、政党を超えて議論されるべきであるが、このように全面に掲げて選挙戦に臨む心意気に大いに期待したい。
県連では、3区の佐藤やすきさん(国民民主党)、5区の梶原やすひろさん(立憲民主党)、6区の桜井シュウさん(立憲民主党)、7区の安田真理さん(立憲民主党)の推薦を決定していたが、9月以降新たに1区の井坂のぶひこさん(立憲民主党)、10区のおき圭子さん(立憲民主党)の推薦も決定。他の選挙区でも推薦候補を早急に決定していきたい。
人権と平和、民主主義、環境の確立を基軸にした政治勢力の総結集に向け全力で取り組み、推薦候補者の全員当選を勝ち取ろう!
県連女性部は9月26日、兵庫県立姫路労働会館を会場に部落解放第60回兵庫県女性集会を開催する。
2020年からの新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、日本国内にも多くの影響を及ぼし、生活様式や働き方も一変した。とりわけ女性の雇用や生活へ大きな影響を及ぼしている。女性の自殺者数やDVの相談件数も増加している。
部落解放運動のなかで、女性は命と生活を守る闘いの先頭に立ってきたが、今こそこの闘いは重要となってきている。
女性部では今年度、以下の課題に重点的に取り組む。
1 部落解放・人権施策確立に向けたとりくみ
2016年に施行された部落差別解消推進法を周知、活用するとりくみをおこなってきたが、まだまだ県全体に広がっているとは言えない。県内自治体への要請行動や条例づくりに一層のとりくみが必要である。
部落の実態調査の実施を国や自治体に求め、生活を守るとりくみに生かしていくことも重要である。
2 狭山第3次再審闘争のとりくみ
狭山の闘いは今年で58年目になる。2009年から始まった三者協議のなかで弁護団が提出した新証拠は242点にもなる。一日でも早く再審開始を実現し、石川さんの無罪を獲得するために裁判所に事実調べや鑑定人尋問をおこなうよう求めていこう。
3 差別糾弾闘争のとりくみ
全国部落調査復刻版裁判は提訴より5年が経過した。
東京地裁での判決は9月27日に出される。この裁判は我々にとって絶対に負けることができない闘いである。部落差別を助長・拡散する鳥取ループを許さず、何としても裁判闘争に勝利しよう。
4 男女平等社会実現に向けたとりくみ
2015年、女性活躍推進法が制定された。しかし、今年3月に世界経済フォーラムより発表されたジェンダーギャップ指数では、日本は156ヶ国中120位と過去2番目の低順位であり、主要7ヶ国中では最下位であった。いくら法律を制定しても、それを実行に移す行動が伴わなければ何の意味もない。男女平等社会実現に向けて女性が意思決定機関に参加できる環境・組織づくりをめざそう。
県連は、今年の県連大会で「男女平等社会推進本部」を設置した。組織内の意識変革と組織の在り方についても議論していく土台となる。今後、学習会などを計画し、学びながら、女性差別の現実を変えるために行動していかなければならない。
また、行政の男女共同参画審議会にも積極的に関わりながら、マイノリティの声を施策に生かしていくことも必要である。
女性が先頭に立ち、国内外の女性たちと反差別・貧困のネットワークをつくり、人権、平和、環境、命と生活を守ろう。女性集会に結集し、議論を深めながら、女性集会の成功をめざそう!
コロナ禍の中、東京都では緊急事態宣言が発令されているにもかかわらず、オリンピックが敢行されている。6都道県の会場では無観客開催の措置がとられてはいるものの、東京では1日の新規感染者数が2800人を超える(7月27日)など、新型コロナの感染は拡大するばかりである。
連日のメダル獲得のニュースに、危機感もかき消されてしまいがちではあるが、選手や大会関係者からは陽性者が相次いで出ている。菅首相が繰り返す「安全・安心」はすでに破綻していることは誰の目にも明らかである。開催を強行することで「コロナに打ち克った」とアピールする思惑があったのだろう。一体、誰のため、何のためのオリンピックなのだろうかと考えずにはいられない。
また今回のオリンピックで日本社会の人権意識の低さが全世界に露呈した。
開会式の数日前には楽曲担当のミュージシャンが学生時代におこなった障がい者虐待を、何の反省もなく雑誌などで語っていたことが明らかとなり、厳しい批判を受けて辞任した。また演出ディレクターがお笑い芸人だった当時、自作のコントで「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」というセリフを使用していたことが発覚。開会式前日に解任された。
2月の森喜朗の「わきまえない女」発言に始まり、3月の演出統括者の女性タレントの容姿いじり…。これだけオリンピック関係者の差別言動が相次いだのは、差別問題への認識の欠如があったからであろう。
日本社会の人権意識の低さの背景に、安倍政権以降の歴史修正主義と差別排外主義の急速な強まりの中、人権意識や歴史認識に欠ける人物が公的空間に当たり前のように出てきていることもあるのではないか。
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7月の兵庫県知事選挙では、自民党と日本維新の会が推薦した斎藤元彦・元大阪府財政課長が当選した。
自民と維新。どちらを向いて県政を運営するのかとい注目するメディアもあるが、県議会対応について、新知事は「最大会派の自民党に一定の軸足はある一方で、県政の改革を求める県民の声も強いので、維新の改革も進めていく」と述べており、やはり維新の「人」と見るのが妥当であろう。この10年間、大阪で人権や福祉の施設を切り捨ててきた維新政治を真横で見続けてきた私たちにとって、これからが本当の正念場である。
今秋には第49回衆議院選挙が実施される。一部報道などで有力視されているのは、パラリンピックが閉幕する9月5日より後に臨時国会が開かれ、衆院を解散するというシナリオ。残された時間はあまりない。
維新は2区と8区以外のすべての選挙区で候補者を擁立するとしている。
県連として、現時点では3区の佐藤やすきさん、5区の梶原やすひろさん、6区の桜井シュウさん、7区の安田真理さんの推薦を決定しているが、他の選挙区でも推薦候補を早急に決定し、新自由主義路線を是とし、貧困と格差を拡大する政治勢力と対峙する体制を作らねばならない。
次期衆議院選挙を人権と平和、民主主義の確立をめざす重要な闘いと位置づけ、全力で取り組もう!
コロナ禍で問われる自治体
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は、国、地方自治体のあり様を深く問うものとなった。
実際に対応する地方自治体の対策の違いによって、その効果、市民生活に及ぼす影響が大きく異なることも目の当たりにしてきた。
4月末、雑誌『科学』5月号(岩波書店)に興味深い記事が掲載された。慶應義塾大学商学部の濱岡豊教授が3月22日時点でのデータを用い、47都道府県の新型コロナへの対応を評価、ランキング化した研究だ。
健康影響、対策、市民の協力、経済影響の観点から、累積陽性者あたり累積検査人数、人口あたり受入確保病床数、自宅療養率、人の流れ、消費支出金額など10指標を選定し、評価した。
これによると、最も評価が高かったのは鳥取県。逆に、最下位は大阪府、その次が東京都である。
鳥取県は、検査体制の強化で感染を抑え込んでいる台湾やニュージーランドと同様に、陽性者が少ない段階から多くの検査をおこない、感染者の早期発見、早期の療養につなげ、陽性率も低く抑えられていることが評価された。
最下位の大阪府はどの指標も低く、対策の失敗が経済面へ大きな悪影響を与えており、「全体的に対策を立て直す必要がある」とされた。実際にこの後の第4波では、人口当たりの死者数や自宅「療養」者数が全国で突出して多かった。
この研究ではないが、公立病院の統廃合を推し進めたことなど、大阪府の医療政策も対策の失敗につながったとの指摘もある。
劇場型政策は意味がない
昨年12月の朝日新聞調査で「コロナ対応で評価する政治家として大阪府・吉村知事、東京都・小池知事が上位2位」だった。このランキングでは、正反対の結果となったことについて、濱岡教授は「市民を対象にした調査では、メディアに登場し語る者が上位にランキングされるのはある意味仕方がない」が、「健康や経済への影響を見る限り、そのような劇場型の政策には意味がない」と断じる。
「イソジンがコロナに効く」などと会見でおよそ科学に基づかない無責任な発言をしたり、テレビに頻繁に登場し、「やってる感」のアピールにいそしむのではなく、実際に何をやるのか、住民の命と生活を守れるのか、が問われているのだ。
7月18日は兵庫県知事選挙がおこなわれる。
「維新が大阪でやっているような政治を兵庫でも進めたい」と語る人物も立候補を表明している。
国でも都道府県でも、リーダーにどんな人物を選ぶかがいかに大切か、このコロナ禍において私たちは身に染みて感じているのではないだろうか。「やってる感」はいらない。住民サービスを切り捨てる「身を切る改革」もごめんだ。
私たちは、人権を大事にし、多様性を重んじ、住民の命と生活を守る対策を着実に進めることのできる知事を選びたい。
兵庫県の今後を決める大きな分岐点となる大事な選挙である。一人でも多くの人に声をかけて、必ず投票にいこう。
新型コロナの感染拡大が全国的に進み、兵庫県でも緊急事態宣言が延長された。感染力が強い変異株による感染が拡がり、対象地域の追加や期間延長など、状況は悪化するばかりだ。死亡者は全国で1万2千人を超える。病床数不足のため自宅待機・療養をせざるをえない人は全国で3万人、大阪で1万4千人(4月29日)を超えるという医療崩壊の事態である。高齢者を対象にしたワクチン接種が連休明けから本格化したが、進捗は遅く、感染防止策の決定打とはなっていない。
このような状況で、東京オリンピック・パラリンピックを開催すべきではない。
世界保健機関が「パンデミック(世界的大流行)」を宣言したのは昨年3月。政府は「マスク配布」や「現金給付」などを決定するまでのスピードが遅く、お粗末さを露呈した。日本のコロナ対策の遅れは、明らかにオリンピックが影響している。昨年3月末の「延期」の判断の際よりも、感染状況は明らかに現在の方が悪化しているが、疲弊した医療現場や困窮者などへの支援・補償は十分とは言えない。「オリンピックどころではない」状況にもかかわらず、政府は開催に固執し続けている。中止する気がまるでないのだ。
国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会も「開催する」姿勢を変えていない。コロナ対策として参加選手に対してPCR検査を毎日実施することなどを計画し、何が何でも開催したいようだ。
しかし、医療環境が整わないことや選手が十分な準備ができないことなど「オリンピックどころではない」状況は、日本だけではなく世界的なものである。無観客にしても、世界中から人を集めるというリスクを冒すことは、どう考えても安全ではない。「平和の祭典」というオリンピックの理念からも逸脱することになる。開催するとなれば十分な熱中症対策も必要だが、ただでさえ医療従事者に負担がかかっている現状で、現場がパニックになることは想像に難くない。ボランティアも対応におわれ、リスクにさらされることになる。あらゆる人にさらに負担をかけるかたちで開催するオリンピックは有害である。
宇都宮健児・元日本弁護士連合会会長が発信した五輪中止を求めるネット上の署名は5月14日に35万筆を超え(5月26日時点40万筆)、オリンピック中止を求める要望書が5月14日に東京都、21日に政府と大会組織委員会に提出された。大企業がスポンサーとなるオリンピックは、今やスポーツの名を借りた商業イベント。新型コロナの感染状況、疲弊した社会の様子に目を向けずに、「今更中止できない」と開催にひた走る姿勢を見れば、「何のためのオリンピックか」と考えることも、中止を求める声が高まることも自然である。
IOC幹部による「アルマゲドン(世界最終戦争)でもない限り実施できる」という信じられない発言も飛び出したが、政府はIOCの姿勢を口実にするのではなく、今からでもオリンピック・パラリンピックの中止の意思を示すべきである。イベントよりも大切なのは、人の命である。
県連は7月の兵庫県知事選挙で、金沢和夫・前兵庫県副知事を推薦することを決めた。金沢さんは2010年からの副知事在任中、兵庫県人権啓発協会の理事長なども歴任、人権行政の先頭で活躍してきた人だ。
知事選には、一部の自民党県議が出馬要請した前大阪府財政課長が立候補を表明。日本維新の会がいち早く推薦を決定した。この元課長は「(維新と)政策の方向性が一致した」とし、兵庫維新の会代表も「大阪府の職員として3年間、維新の政策を勉強してきた」と語っている。キャリアや状況から判断して、維新の政策を体現する候補者であることは間違いない。
大阪では2008年に橋下徹元知事が誕生して以降、10年以上維新政治が続いている。「二重行政の廃止」「行政のスリム化」「官から民へ」を掲げ「行政改革」を進める中で、職員削減、パソナなど民間企業の派遣への置き換え、福祉や人権、教育の予算削減、公的病院の統廃合や補助金削減、民営化を進めてきた。
その結果、大阪母子医療センターなどが医療機器購入や運営資金のために寄付を呼びかけざるを得ない状況になるなど、公的医療の脆弱化が指摘されている。
現在、新型コロナの感染拡大が続いており、4月25日には大阪、兵庫、京都、東京の4都府県に3度目の緊急事態宣言が発令。兵庫県も厳しい状態だが、大阪府では重症病床の使用率が実質100%を超え、他県や国に看護師派遣を要請する状況になっている。これまでの「維新改革」のつけが今、住民にまわっていると言えないだろうか。
公的医療・保健の切り捨ては国が進めてきたことでもあるが、維新はそれを先取りしてやってきたのだ。
維新はまた、人権文化センターなど人権行政の拠点の統廃合も進めてきた。1985年開館のリバティおおさか(大阪人権博物館)は国内外で高い評価を受けてきたが、大阪府、大阪市が2013年補助金を停止。2015年には大阪市が建物取壊しと市有地の明渡しを求めて提訴、昨年休館に追い込まれた。市有地とは言ってもそこは元々、地元の被差別部落の人々が小学校用地にとお金を集め市に寄付した土地である。
コロナ禍で差別が広がり、解雇や雇止めは10万人を超えるなど人々の生活は疲弊している。これから必要なのは、医療、福祉、教育など公共的な分野を手厚くすることであり、維新のやってきたことと正反対の政策である。「維新の政策を勉強してきた」人物にそれができるはずがない。
県連が推薦する金沢和夫さんは「誰も取り残さない社会」「どの人も、どの地域もともに輝く兵庫」を掲げ、これまでの実績を活かしつつ、コロナ後の兵庫の躍動を推進することも重点目標としている。敵を作って叩き分断する維新とは異なり、人権を大切にし、支え合い分かち合う社会を金沢さんとともに作ろう。
県連は県内2会場で「かなざわ和夫さんを囲む人権のつどい」を開催する。これまでにない厳しさが予想されるが、金沢さんの必勝をめざし、「人権のつどい」への参集、金沢さんへの支援をお願いする。
県連は来る4月11日、のじぎく会館で第62回大会を開催する。例年より代議員を半減して、感染症対策を行って大会に臨む。本大会の主要な課題のうち、次の6点を挙げる。
1、男女平等社会推進のとりくみ
本大会で県連内に「男女平等社会推進本部」を設置する。そして、具体的に組織内の意識変革と組織の在り方について議論をはじめるとともに、部落女性や被差別マイノリティ女性の生活実態調査を国や各自治体に求めていく。
2、県連規約の改正
コロナ禍のもと、昨年の大会は書面議決としたが、緊急避難的な措置であった。現規約では代議員等が一堂に会する大会しか想定していない。今後も大規模災害や深刻な感染症の発生が起こる可能性は十分にある。最高決議機関である県連大会やその他の機関会議も非常時に対応できるよう、規約や規定を整備する。
3、命と生活守るとりくみ
新型コロナウイルス感染症は、未だ収束の見通しもない。政府の無策が追い打ちをかけ、命と生活が脅かされている。また新型コロナに対する不安や恐怖、先行き不安などから偏見・差別が生まれている。これに対するとりくみとともに、政府や自治体に対しては、徹底した検査の実施や医療の充実を求める。合わせて、生活保障を要求する。
4、狭山事件の再審無罪を
狭山事件は、事件発生から58年を迎える。石川一雄さんの無実を示す科学的根拠をもった証拠は整っている。東京高裁に事実調べと再審開始決定をさせるため、世論形成に向け運動を強化する。各ブロックで共闘会議等と連携して狭山闘争を強化しよう。また青年の組織化に狭山事件の学習を取り入れよう。
5、「全国部落調査」復刻版出版事件裁判の勝利
差別の確信犯・差別を商う鳥取ループ・示現舎に対する裁判は3月18日に結審し、9月27日に判決が出される。絶対に負けられない裁判であるが、決して油断できない。最終意見陳述で彼らは「学術研究の自由」と称し、「全国部落調査」復刻版の出版やネット上の公開を正当化しようとした。そのために、アメリカのラムザイヤー・ハーバード大学教授が「全国部落調査」を引用して論文を書いたことまで持ち出している。この論文は部落や沖縄、慰安婦問題についてデマと差別を展開して批判を受けているものである。
また裁判勝利とともに、彼らの収入減を断つことも重要である。多くの人に呼びかけ、彼らのサイトの広告企業への抗議と掲載中止要請を集中させよう。
6、知事選はじめ各種選挙で県連推薦候補の当選を
県連は7月18日投開票予定の兵庫県知事選挙で3月8日、金沢和夫副知事に出馬要請を行った。金沢副知事は3月24日の県議会最終日に出馬表明し、副知事を辞職した。部落問題・人権問題に理解の深い金沢知事誕生に向け、県連は最大限の取り組みを行う。また、金澤和夫さんを囲む人権のつどいも開催する。
その他、今年は市町長選挙や市会・町会議員選挙も予定されている。地元ブロックや県連推薦候補者の必勝をかちとろう。
県連大会への代議員の結集を訴える。
今国会で「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」「新型インフルエンザ等対策特別措置法」などが改正されました。
厚生労働省は改正の趣旨を「国民の命を守るため必要な見直しは速やかに対応していく必要がある」としています。しかし、医療現場や保健所の実情を踏まえず、いたずらに私権を制限する暴挙であり、改悪に他なりません。
感染症法改正では、立法事実も明らかにされないまま、入院勧告に従わない感染者などへの罰則(行政罰)が作られました。感染者個人に責任を負わせるものだとして日本医学会連合、日本疫学会、日本公衆衛生学会などが反対声明を出しました。ハンセン病市民学会も「著しい人権侵害」、「国の誤ったハンセン病隔離政策の教訓」が生かされていないと、反対声明を出しています。
感染者等への差別があるなか、罰則の新設は、差別の扇動・拡大、相互監視の陰湿な社会を生み出すことにつながります。感染症法前文にある「過去にハンセン病…等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要」という法の趣旨に反するものに他なりません。
特別措置法改正では、休業や営業時間短縮の要請・命令に応じない事業者に対する行政罰が作られました。十分な補償もないまま強権的に権利を制限し、意に従わせるようとする管政権の政権運営を許してはなりません。
また、医療・保健体制の問題点もあらためて浮き彫りになっています。
戦後、一般病床数(一般病床と療養病床)は1980年代まで増加し続け、全国で153万床(1990年)となりました。しかし、1985年の医療法改正、医療計画制度導入で総量が規制されることになり、減少に転じます。また、臨床研修医制度の改悪で研修先が完全自由化され、地方の公立病院はたちまち医師不足に陥りました。
厚生労働省は2019年9月、公立・公的病院の再編・統合を検討するよう、424の病院リストを公表し、都道府県に通知。コロナ禍で検討結果期限は延期されたものの、その方針は見直されていません。
保健所数についても、1989年には全国に848所あったものが、2020年には469所とほぼ半減しました。住民に身近な保健所の激減は、地域の保健衛生や育児、感染症対策に決定的な影響を与えています。
第1波のときから独自の検査基準を採用し注目された和歌山県は、保健所再編の流れに抗して保健師の数を確保。保健所数も10から8と、2割減にとどまっています(兵庫県26→12、神戸市9→1、大阪府22→9、大阪市24→1)。第3波対応でも新規感染者数(人口比)が関西2府4県で最も少なく、その背景に手厚い保健所体制があると指摘されています。
こうした安易な効率化の流れを止めなければなりません。今こそ、差別の拡大に抗し、いのちとくらしを守る社会に変えていくことが問われています。
最高裁は2020年12月22日、袴田事件の特別抗告審で、再審開始決定を棄却した東京高裁の判断を取り消し、審理を東京高裁に差し戻す決定をした。
袴田事件とは1966年6月に静岡県清水市(現静岡市清水区)のみそ製造会社の専務宅から出火、焼け跡から一家4人の他殺体が発見された事件。警察は予断と偏見に基づいて、工場で働いていた袴田巖さんを逮捕した。袴田さんは逮捕から20日目に自白させられたが、裁判では一貫して無実を訴えている。
1968年9月、第1審の静岡地裁で死刑判決、1980年12月に最高裁が上告棄却し確定。袴田さんは再審を求めて闘っている。
第2次再審請求で2014年3月27日、静岡地裁は「重要な証拠が捜査機関に捏造された疑いがある」「拘置をこれ以上継続することは耐えがたいほど正義に反する」として、再審開始と死刑及び拘置の執行停止を決定、袴田さんは48年ぶりに釈放された。
しかし、検察側が抗告、2018年6月11日に東京 高裁は再審開始決定を棄却した。弁護団の特別抗告を受け今回、最高裁は「著しく正義に反する」と、高裁の棄却決定を取り消した。ただ、差し戻しになったことで闘いは長期化することになった。
5人の裁判官のうち2人(林景一・宇賀克也裁判官)は差し戻しではなく、再審にすべきと異例の反対意見を述べた。弁護団も「両裁判官の意見は、公平かつ公正に証拠を評価した、正に人権の砦たる最高裁にふさわしいものであるだけでなく、国民の目線に立った優しく血の通った意見である」との見解を出した。
狭山事件の元担当裁判長で2009年に検察に証拠開示を勧告した門野博弁護士(元東京高裁判事)は「ここまでの疑問が出ているのなら…再審を開始して決着をつけるべき」「差し戻すのはあまりにも回りくどい判断」と述べている。
袴田事件発生から50年以上が経過している。袴田さんは84歳、姉のひで子さんも87歳、ともに高齢だ。1日も早い再審決定を求めていかなければならない。
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また、狭山事件の再審・無罪も、ともにかちとっていかなければならない。
狭山事件と袴田事件。この2つの冤罪事件は共通するところがある。警察の偏見に満ちた捜査と逮捕。長時間に及ぶ取り調べと自白の強要。証拠の捏造―。
袴田事件では、袴田さんが事件直後左手中指を怪我していたこと、元プロボクサーだったことなどを理由に袴田さんを犯人と断定し、逮捕した。狭山事件でも捜査に行き詰まった警察が被差別部落地域に見込み捜査をおこない、石川一雄さんを別件逮捕した。
今回の決定で閉ざされかけた袴田事件再審への扉は開いたが、狭山事件は多くの新証拠を提出しているにも関わらず、鑑定人尋問もおこなわれていない。
今こそ世論を大きくし、大野勝則裁判長に事実調べ、再審開始を求め、今年こそ再審の扉を開けよう!
2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の蔓延は、私たちの生活に大きな影響をもたらし、さまざまな差別を生み出しています。
不安や不満が深まる社会状況のなかで、差別を許さず、いのちと生活を守る部落解放運動を全力で進めていかなければなりません。
2021年の兵庫県連の主な課題を以下に述べます。
1 コロナ対策の徹底を
第3波の感染拡大は依然収束するめどもなく(12月14日時点)、政府のコロナ対策は不十分過ぎます。医療体制も危機に瀕しています。
この間、自死者が増えています。とりわけ女性が増えているのが特徴です。失業など生活の先行きに不安を覚え、追い詰められた結果ではないでしょうか。根本的な生活保障を求めます。
2 鳥取ループ・示現舎との裁判に勝利しよう
「全国部落調査」復刻版裁判も証人尋問を終え、いよいよ3月18日に結審を迎えます。5月には判決が出される見込みです。差別を商い、被差別部落に自分の本籍を移し「自分も部落民だ、復刻版を発行できない差別を受けた」と詭弁を弄する被告を許すことはできません。
差別的なサイトを運営し、そこから広告収入などを得ている被告の収入源を絶つことも重要です。この裁判に勝利できなければ、第2第3の鳥取ループを野放しにすることにもつながります。
3 狭山再審をかちとろう
石川さんに無期懲役を科した寺尾確定判決の有罪根拠はすべて崩れ去っています。東京高裁は直ちに事実調べを行い、再審を開始すべきです。
そのために必要な行動の全て(青年や共闘を対象とした学習会、要請はがき、署名、街頭行動など)をやりきりましよう。さらに創意工夫を凝らした活動を展開しましょう。
4 兵庫知事選挙はじめ首長選挙、市町議員選挙で県連が推薦する候補者の必勝をかちとろう
昨年12月11日の県議会最終日に井戸兵庫知事は次回の知事選挙には出馬しないことを表明しました。夏には兵庫県知事選挙が行われる予定です。
県連と井戸県政は良好な関係を築いてきました。県連は井戸知事の後継者を推薦し、その必勝を期します。
また今年予定される神戸市など11市7町の首長選挙、8市5町の議員選挙で、県連推薦の首長、議員の当選をかちとりましょう。
5 県内全ての自治体で部落差別解消の条例をかちとり、計画の策定や実態調査を実施させよう
兵庫県内では部落差別解消推進法以前に4市町で、法律施行後5市町で部落差別や人権に関する条例が制定されています。とくに、たつの市では市民意識調査や実態調査が実施されました。実態が明らかになることで課題も明確になります。
県内29市12町、すべての市町で部落差別解消の条例を制定させることが重要です。組織内外の議員と連携し、あらゆる差別を許さず、住民の安全と生活を守る自治体としての姿勢を明らかにさせましよう。