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2020年

■えん罪57年―東京高裁は狭山事件の再審をおこなえ(5月5日号)

 冤罪57年、確定判決である東京高裁の寺尾不当判決(無期懲役判決)から46年。第3次狭山再審闘争は大きな山場を迎えている。
 2009年に東京高裁の門野裁判長が東京高検に証拠開示を勧告してから、これまでに191点の証拠が開示された。この中には、逮捕当日の石川一雄さんの上申書、取調べ録音テープ、被害者の万年筆のインク瓶、カバン、腕時計、スコップ、取調べにかかわる捜査報告書など、重要な証拠が含まれている。これを受けて弁護団は専門家による新たな科学的鑑定や意見書など、224点の新証拠を東京高裁に提出している。これらによって、寺尾判決の前提は完全に崩れている。
 まず、有罪証拠の一つとされた、死体発見現場近くで発見されたというスコップ。寺尾判決では、石川さんがかつて働いていた養豚場のもので、石川さんが死体を埋めるのに使ったとされている。これについて、弁護団は2018年7月と2019年12月、元京都府科捜研技官の平岡義博・立命館大学教授の鑑定を提出した(平岡第1・第2鑑定)。平岡鑑定人は、狭山現地での観察、地質等に関する調査、文献調査をおこなった上で、事件当時の埼玉県警鑑識課員の鑑定の誤りを指摘し、このスコップが死体を埋めるのに使われたとは言えないことを明らかにした。
 被害者の万年筆についても、弁護団は多くの証拠を提出している。その一つ、2018年8月に提出された下山第2鑑定(下山進・吉備国際大学名誉教授)では、石川さんの家から「自白」にもとづいて発見されたとする万年筆のインクから、被害者が事件当日に使っていたインクに含まれるクロム元素が検出されなかったことを指摘し、この万年筆が被害者のものではないことを示した。
 石川さんを取調べたS巡査が作成した捜査報告書は、石川さんが単独犯行の「自白」を始めた6月23日に作成されたもの。石川さんが「Yちゃん(被害者)はどうなっていたんべい。それを教えてくれればわかるんだ」と尋ねたと報告されている。開示された取調べ録音テープとも内容的に一致しており、石川さんが死体の状況を知らなかったこと、自白が作られたものであることを示している。この報告書と取調べ録音テープは、2審の東京高裁で、捜査官らが検察官と共謀して偽証していることも浮かびあがらせている。
 こうした証拠開示によって発見された新証拠は、確定判決に合理的な疑いを生じさせている。東京高裁は、鑑定人尋問をおこない、再審を開始すべきである。
 毎年、石川さんが不当逮捕された5月23日に合わせ、東京で「狭山事件の再審を求める市民集会」が開催されているが、今年は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を踏まえ、中止となった。
 兵庫県で毎年8月に開催している「狭山事件の再審を求める県民の集い」は開催の方向で準備を進めている。同盟員はじめ多くの県民の力を結集して集会を盛り上げよう。そして、世論を大きくし、後藤眞理子裁判長に鑑定人尋問などの事実調べ、再審開始を求めよう!


■鳥取ループ・示現舎を徹底的に糾弾する(4月5日号)

 鳥取ループ・示現舎に対する裁判闘争は4年目に突入した。これまで進行協議がすすめられてきたが、今年はいよいよ証人尋問がはじまる。証人尋問は裁判闘争の成否につながる重要な闘いである。
この裁判は、そもそも「インターネット上に地名を暴露すること」が問題だと主張してきたものだ。これに対し、鳥取ループらは「原告らは被差別部落出身者であることを『自称している』にすぎない」「部落出身者であることを証明できないのであれば、自分たちの行為(部落の所在地情報の拡散)によって被害を受けることはない」「同和対策事業はあやまった歴史認識の上におこなった事業」などの主張を繰り返している。
 あらためて強調しておきたいが、この裁判は「誰が出身者か」や「同和対策事業の是非」を問うものではない。
 われわれが指摘しているのは、「全国部落調査」復刻版やネット上に部落の所在地情報が流されることによって、そこに住んでいる人やそこにルーツをもつ人が「部落出身者」と見なされ、忌避、差別されるという現在の部落差別の実態である。鳥取ループらは、この根本的な問題をすり替え、歪曲している。こうした陰湿で狡猾な主張に引っ張られることなく、「地名の拡散」が差別につながるものであり、鳥取ループらの主張が「差別する側」の論理であることを示すとともに、これまでの差別事件を通じて、地名がどのように扱われ、 差別と排除を生み出したのかを証明しなければならない。
 そして、悪質極まりない「部落探訪」も絶対に許してはならない。
「部落探訪」とは、鳥取ループらが全国各地の被差別部落に潜入し、所在地や特徴が一目でわかるような写真をネット上に大量に掲載したもの。2015年から自身のブログに掲載し、その数は3月30日現在、18都府県178か所にもおよぶ。兵庫県内だけでも8市10地区が撮影されている。裁判開始以降、掲載数を増やし、2019年だけでも52か所をネット上に晒した。
 また、YouTube上に「神奈川県人権啓発センター」名でチャンネルを開設し、「【学術】部落研究」のタイトルで全国 82 地区(番外編5地区を含む)を動画で晒している。これらの悪質な行為を模倣する者も出現しており、深刻な二次被害も起きている。
 裁判は年内に結審、年度内には判決が出される見通しとなった。県連としては兵庫25人の原告を先頭に、共闘団体、宗教団体、企業、行政関係者らとの連携をさらに深め、支援の輪を広げるとともに、兵庫県連独自での裁判闘争も視野に入れて取り組んでいきたい。
 4月26日には、裁判闘争の勝利に向け、決起集会を開催する。県内各ブロック・支部からの積極的な参加を要請する。
 部落差別を助長・拡散する鳥取ループ・示現舎を徹底的に糾弾する闘いをすすめていこう!


■第61回県連大会を成功させよう(3月5日号)

 県連は3月22日、のじぎく会館において第61回県連大会を開催する。
今大会より、県連大会代議員の選出方法、代議員選出基準単位などの変更をおこなった。
 代議員の選出は、これまで支部ごとの選出としていたが、支部・ブロックの活性化のとりくみを強めるためにブロック(市町)単位で選出する方法へ改定した。また、きめ細やかに同盟員の声を反映するために、代議員選出基準を同盟員40人単位に変更した。
 部落解放同盟の基本組織が「支部」であることは言うまでもないが、日常的な組織活動に困難を抱えている支部もあり、地域の運動をどう継続していくのかを考えていかなければならない。今回の変更は、各支部の現状を踏まえて、支部・ブロックの活性化と、支部の合併等を含む組織再編を促すためでもある。
◆ ◆ ◆
 今大会の主要な課題の一つは、差別に対する闘いを強化することである。とりわけ、部落の地名をネット上に暴露し差別を広げ、差別を商いとしてきた鳥取ループ・示現舎との裁判闘争に勝利することである。提訴から三年が過ぎ、秋には証人尋問が予定されている。ともに取り組む人たちとのつながり、支援の輪を広げながら闘いをすすめていくことが重要である。
 二つ目に、ブロック・地域・支部の活性化をすすめ、強固な組織建設をはかることである。
兵庫はその多様な気候と風土から「日本の縮図」と言われているが、部落もまた地域ごとに特色を持っており、それらの特色を活かすとりくみが求められている。地域の活性化にむけ活用できる制度や施策を駆使し、各級役員の世話役活動を強化していくことが必要である。地域に存在する隣保館や教育集会所、公民館等の施設を活用し、様々な世代の人々が集まる交流の場としていくことも大切である。支部役員や関係者が地域おこしの牽引車となるよう、指導者育成に向けた研修も企画する。
また、部落解放運動が抱える困難を打破するために、次世代の育成、青年層の組織化が重要な課題である。多くの青年層が故郷のムラを離れ、部落外で生活するなか、部落解放運動に関心の持つ青年が参加できるためのシステムを作ることは喫緊の課題である。
 三つ目に、狭山再審闘争勝利に向けた闘いの強化である。
57年も無実を訴え、80歳を超えた石川一雄さんの再審無罪の展望を切り開かなければならない。2009年から開始された裁判所・弁護団・検察の三者協議は、これまで41回積み重ねられてきた。弁護団は224点もの無実の新証拠を裁判所に提出してきたが、検察側は反証を提出し、再審の妨害をおこなっている。県民のつどいの開催や映画『獄友』を活用した情宣行動などの他、冤罪が生み出される要因になっている「代用監獄」の廃止や取り調べの全面可視化、証拠開示の法制度化を求める請願署名のとりくみなど、あらゆる運動を展開しよう。
 代議員の積極的な論議で大会を成功させよう。


■部落差別解消・人権条例制定にむけ運動の強化を(2月5日号)

 2016年に施行された部落差別解消推進法には、「現在もなお部落差別が存在」し「許されないもの」と明記されている。しかし、理念法であり罰則規定や救済規定はない。具体的な事業や予算確保についても規定していないので、具体化―部落差別をなくす施策につなげるためには、自治体での関係条例の制定が重要になる。県内では2017年にたつの市、2018年に加東市、2019年に神河町で部落差別解消推進の条例が制定された。それぞれ審議会の設置、調査の実施や計画の策定など、具体的な施策実施が規定されている。
 たつの市ではすでに審議会が設置され、市民の意識調査や関係住民の調査が行われた。その結果を踏まえた一層の人権行政の進展が期待される。
加東市議会では、議員から「不十分であるがその効果に期待する」との賛成討論がなされた。神河町議会でも、条例に賛成の立場で「相談体制の充実を」求める意見が出た。具体的な施策はこれからであるが、行政も議会も真剣に部落差別解消に努力しようとする姿勢が現れている。
 現在は尼崎市や三田市で条例制定の準備がすすんでいる。ただ、これらは部落差別解消推進に特化したものではない。尼崎市の条例案は「尼崎市人権文化いきづくまちづくり条例」。尼崎市と事業所、市民が力を合わせて尼崎市を安全で安心して暮らせるまちにするために人権を大切にしようとする趣旨の条例である。2016年に施行された障害者差別解消法、ヘイトスピーチ解消法を含めた「人権三法」を受けたものとなっている。
 県連としては、「部落差別解消」に特化した条例でなければだめだという立場は取らない。部落差別解消に特化したもの、人権全般を視野に入れた条例のどちらも重要だと考えている。大切なことは各市町での人権状況を直視し、人権侵害をなくし改善するとりくみをすすめることである。
 1月18日、尼崎市で条例制定を応援する市民集会が開催された。市議会議員や連合地区協議会、兵教組尼崎支部、阪神医療生協、日本軍慰安婦問題を考える会・尼崎の他、障がい者団体、部落解放同盟尼崎市連絡協議会などが呼びかけ人(団体)になっており、それぞれが決意を表明した。尼崎でもまだまだ人権課題があることが明らかにされ、だからこそ市民が条例制定を応援しようと改めて確認する集会となった。
 ところで、尼崎市条例や神河町の条例制定に兵庫県地域人権運動連合が反対している。彼らは「法律や条例で対応すべき部落差別は存在しない」「市民に責務を課すのは市民を差別者扱いするものだ」等の主張をしている。各地の人権意識調査だけを見ても部落差別の現状はわかると思うが、彼らはそれを見ようともしていないのではないか。こうした、「反対のため」の反対をする一部の人々を論破し、自信を持って条例制定運動を展開しよう。


■2020年展望と課題(1月5日号)

一 部落解放をめざす運動の継続・拡大を
 2022年には水平社結成100年を迎える。しかし、「現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じている」と部落差別解消推進法(2016年)が示すように、厳しい部落差別の実態がある。
 1969年から33年間に渡っておこなわれた対策事業によって住環境改善や教育・啓発は一定進展してきたが、現在の市場経済優先政策により格差が拡大し、社会に閉塞感が漂うなか、不満の捌け口や愉快犯の標的として部落差別が悪用されている。
 また鳥取ループ・示現舎や元フジテレビアナウンサーの長谷川豊などに象徴される差別の確信犯への対応も大きな課題である。
 部落差別をはじめとするあらゆる差別をなくすために、兵庫県連は以下のとりくみに全力をあげる。

二 支部とブロック・県連の連携強化、同盟員の結集
 昨年もいくつかの支部が活動を休止し、同盟員数は減少している。同盟員の年齢層も極めて高く、運営が困難な支部が少なくない。こうした支部についてはこれまで合併や統合などで組織維持をおこなってきたが、これまで運動で勝ち取ってきた成果を守り、確実に継承していくためにも、支部の再編やブロック・地協・市協との連携方法など、今後の部落解放運動の在り方を真剣に論議しなければならない。
 また県内各地域の「人権のまちづくり」運動を活性化させるため、毎年実施するブロック懇談会などの機会を通じて、県連の「ブロック活動助成金」「人権のまちづくり事業補助金」制度や各種行政制度などの積極的な活用を呼びかける。
 そして何よりも、次世代を担う活動家の育成に全力で取り組まなければならない。県連青年部は昨夏の第26回大会で、支部がなくなってしまった地域や、県外からあらたに兵庫に就職・進学してきた青年を組織できるよう、青年部規約を改正した。部落解放同盟の基礎組織が支部であることは言うまでもないが、部落解放運動に関心をもつ青年が参加できるためのシステムを作らなければならない。

三 推進法の具体化を求めよう!
 部落解放運動の主要な課題である人権侵害救済法・差別禁止法の制定、 狭山事件の再審実現、差別糾弾闘争をしっかりと取り組むことはもちろん、今年は特に部落差別解消推進法の具体化を進めていきたい。県内では昨年12月に神河町で3番目となる条例が制定され、今年は多可町などでも条例の制定が期待される。県内すべての自治体で条例制定やインターネットモニタリング事業の導入を求めよう!
 部落解放運動を取り巻く状況は厳しいが、現実としっかりと向き合い、2020年を飛躍の年にしよう!