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〒650-0003 神戸市中央区山本通4丁目22番25号

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2013年

■「秘密保護法」に反対する!(12月5日号)

 狭山事件確定判決の寺尾判決から40年が経過した。
 政府・自民党は11月26日、「秘密保護法」を衆議院で強行採決した。この法律は希有の悪法として各地・各界から反対の声が上がっている。
 「特定秘密保護法」の対象となる情報は次の4つに関する情報である。①防衛、 ②外交、③特定有害活動(スパイ活動)、④テロ防止。特定秘密とは「漏洩がわが国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあるため、特に秘匿が必要」な情報と定義しているが、具体的には防衛相や外相など閣僚や官僚が特定秘密と判断した情報を指定する。
 国会審議で閣僚が質問に答えた内容、「何が秘密か、それは秘密です」が図らずもこの法律の正確を表している。特定秘密の基準が曖昧で、なおかつ範囲が広く不明確である。法案のほとんどの項目に「その他」が設けられていて、秘密の範囲は閣僚・官僚の胸三寸である。
 この法律は刑罰が伴い、最高で懲役10年の刑に処するというものである。しかし、何が秘密で何がこの法律に抵触するか事前に明らかでない。市民にとって守るすべもない法律である。
 さらにこの法律は、刑罰を設けながら刑法の基本原則に違反している。それはまさに法治国家の原則に違反する。国家が刑罰を処するに当たって近代法治国家の原則は「罪刑法定主義」である。何が罪になるか事前明らかにしないと刑罰に問えない。
 今でも日本には、「公務員秘密漏洩罪」や「防衛機密」があり、政府のいう情報保全が図られている。
 しかし、今回の法律案は政府が指定した特定秘密を「知ろうとした人、知ってしまった人、知らずに教えてしまった人」まで処罰するというものである。
 現行の日本国憲法は国民主権と基本的人権の尊重、平和主義を基本としている。「知る権利」は民主主義の基本である。この法案は「取材・報道の自由」「言論・出犯活動・学問・研究」「情報をえて、政府を批判」することを監視し、刑罰の対象とするもので、決して成立させてはならない。「特定秘密保護法」は戦前の「軍機保護法」に酷似している。戦前は軍事に関する一切の情報が秘匿された。
 当時、北海道帝国大学の学生であった宮澤弘幸さんが、樺太に旅したときに偶然見かけた根室の海軍飛行場を同大講師の米国人夫妻に話した事が軍機保護法違反となり逮捕・有罪となり投獄、その後病死した事件があった。また戦時中、天気予報すら秘密であった事はあまり知られていない。
 政府が、今なぜ秘密保護法の成立を急ぐのか?それは「日本を普通に戦争のできる国」にするため他ならない。戦争準備のための警察国家・監視国家作りのため、国家安全保障会議設置法案と一体のものである。自衛隊と米軍を一緒に海外派兵し(侵略)戦争できるように軍事機密保護を米国並みにするのが最大の狙いである。そこには人々の人権を守ろうとする視点は一切ない。

■狭山事件の映画上映運動を(11月5日号)

▶原点に立ちかえろう
 狭山事件は部落差別がつくった、えん罪事件である。1963年5月1日、埼玉県狭山市で女子高生が誘拐・殺害された。身代金を取りに来た犯人を取り逃がした警察は、部落に対する予断と偏見に基づく見込み捜査をおこない、石川一雄さんを別件逮捕し、嘘の「自白」を強要した。背景には、事件直後から周辺住民の「あんなことをするのは部落民に違いない」といった露骨な差別意識があった。
 マスコミも、石川さんの住む地区について「犯罪の温床」などと書き、住民の差別や偏見を煽った報道によって「石川犯人像」をつくりあげていった。

▶世論を高める第3次闘争
 再審・無罪に向けた取り組みを通して、検察や裁判のあり方に多くの人の関心が集まり、各地で「狭山事件の再審を求める市民の会」が立ち上がった。そしてそれは、証拠開示と取り調べの全面可視化の法制化を求める運動へと発展してきた。
 そうした中で、2009年6月に裁判所、検察官との三者協議が実現した。同年12月には門野博裁判長が検察に8項目の証拠開示を勧告、2010年5月の第3回三者協議で5項目36点が開示された。

▶133点の証拠が開示
 これまでの弁護団の果敢な闘いによって133点の証拠が開示された。かばんや腕時計の捜査報告書も開示され、接見経過に疑問があり「秘密の暴露」とは言えないことが明らかになっている。弁護団はさらに全証拠の開示を求めている。
 検察官がすべての証拠を見て、出すか出さないかを決める権限を持っている現在の制度自体が公平ではない。証拠は検察の独占物ではない。東京高裁の河合健司裁判長は、7月におこなわれた第14回三者協議でも、証拠開示について柔軟に対応するよう検察官に促したが、検察は充分にこたえようとしていない。
証拠開示を徹底しておこなうように求め、えん罪50年の今こそ闘いを強めていこう。

▶ドキュメンタリー映画が完成!
 石川さんに3年間密着し生活を追ったドキュメンタリー映画が10月に完成した。監督の金聖雄さんは、狭山事件を通して、背景にある差別の問題だけではなく、現在の司法に疑問を抱くようになり、「映像を作ることを生業としている身としてできること」として映画を作り上げた。見終わったあとに誰もが「石川さんは無実だ」と思える作品になったと自負している、という。「えん罪を許さない!」と強く訴える作品ではなく、えん罪被害の中で凛と生きる石川さんの日常を映し出している。
 制作委員会主催の上映会が兵庫、大阪などで開かれることが決定している。また、各地・各団体でも上映会ができるようDVDの貸し出し(有料)が実施される。狭山事件を知っている人はもちろん、知らない人に観てもらい、再審開始に向け世論を大きくしていかなければならない。
 発生から50年を迎えた狭山の再審開始、そして石川さんの無罪へとつなげるべく、上映会に参加し、各地で上映運動を展開しよう。


■第34回県研の成功を!(10月5日号)

 東日本大震災と福島原発事故発生から3年。甚大な被害と深刻な放射能汚染は、私たちの生活・経済・社会の在り方や価値観をも問い直すものとなっている。政府、東電は、一日も早い事故の収束と復旧・復興に力を注ぎ、人権尊重と社会的連帯に基づく、安全で安心な社会の実現のために尽力すべきである。
 「アベノミクス」効果が声高に叫ばれてはいるが、私たちにその実感はまったくなく、厳しい雇用情勢が続いている。年収二百万円以下の給与所得者が千百万人、生活保護受給者が二百十万人を越えるという最悪の状況が続いている。
このように格差が拡大する社会の中で抑圧された人々の不満のはけ口が、社会的弱者や被差別マイノリティにむけられる危険な兆候があらわれている。「在日特権を許さない市民の会」などの団体が公然と排外主義を煽る差別事件を起こしている。私たちは安全で住みやすい地域づくりをするために、努力する必要がある。 
一昨年、兵庫県行政書士会報に掲載された会員からの投稿記事の内容は、部落解放運動などが永年取り組んできた「公正採用」の成果を真っ向から否定するものだった
。学習会などをおこない、一定の解決を見たが、今後も兵庫県行政書士会と県連の連携を求めていかなくてはならない。
 戸籍謄本等の個人情報大量不正取得事件も後を絶たない。本人が知らないうちに個人情報が組織的に高額で不法に取引されているのである。現在、県内11市7町で実施されている「本人通知制度」が県内すべての自治体で導入されるよう取り組みを強化しなければならない。
 また最近では「同和」地区問い合わせ事件も頻発しており、根強い差別意識を払拭するための啓発も重要な課題である。
 そのような状況の中、部落解放第34回兵庫県集会が城崎大会議館を主会場に2日間の日程で開催される。今年のテーマは「日本国憲法を守り、あらゆる人の人権が尊重される社会を築くために ―狭山事件50年、市民の力で一日も早い石川さんの無罪を!」である。
初日の全体会では大阪市立大学大学院教授の朴一さんによる記念講演がおこなわれる。衆議院選、参議院選の自民党の圧勝で、日本国憲法改「正」の声が次第に大きくなってきているが、自衛隊を「国防軍」とするなど、改悪へと大きく舵を切る現政権が示す憲法草案の中味を検証しながら、今こそ平和憲法についてもう一度考えなければならない時期であると考え、この記念講演は設定された。
 翌2日目には「石川一雄さんの無罪を勝ち取るために」というシンポジウムを計画している。えん罪を叫び続けて50年。狭山事件の一日も早い再審開始を実現するために、大きな世論を東京高等裁判所、東京高等検察庁に届けようという思いと、完成した映画『SAYAMA 見えない手錠をはずすまで』の宣伝を兼ねてこのシンポジウムも企画された。
 その他にも「隣保館を考える」など5つの分科会とフィールドワークを予定している。人権が大切にされる社会づくりのため、この研究集会の成功を勝ち取りたい。一人でも多くの参加をお願いする。

■行政闘争を強化しよう!(9月5日号)

 格差拡大、雇用不安などの社会情勢が差別扇動やマイノリティに対する嫌悪を増幅させているが、それを規制する法制度すら、今の日本にはない。
 兵庫県連では、今年も兵庫県行政に対する要望書を提出する。県連執行委員会で7月、8月と論議を重ね、9月にまとめ提出する。
 その内容は大きく次の9項目から構成される。①人権侵害救済および人権啓発に関する課題について、②同和行政・人権行政の推進に関する課題について、③男女共同参画社会の実現に関する要望について、④労働・就労支援に関する課題について、⑤生活に関する課題について、⑥産業に関する課題について、⑦農業に関する課題について、⑧人権保育に関する課題について、⑨部落解放同盟兵庫県連合会が主催・共催する各種集会への支援について。
 さらに各項目ごとに、県として国に要請すべきこと、県が主体的におこなうべきこと、県が県内市町に指導・助言すべきことについて詳細に要求する。
 国に求めることとしては、人権侵害救済に関する法律の制定や人権委員会設置、部落問題をはじめ人権啓発予算の充実、隣保館事業の継続、隣保館改修事業費補助の継続を要請する。
 兵庫県がおこなうべきこととして、人権啓発予算と人権担当の充実・拡大、県民意識調査の丁寧な分析と活用・情報提供、本人通知制度の実施と登録者の拡大、不正取得防止の抑止力アップへ市町への指導と助言などを要請する。
 兵庫県が市町に指導・助言すべきこととして、本人通知制度の実施をはじめ、地域の活性化への補助事業の拡充などを求める。
 
▶各ブロック・市町協議会で対行政闘争を強化しよう
 県連大会終了後、54期も県連六役と執行委員が中心となって、ブロック懇談会をおこなっている。中間まとめをしたところであるが、依然、高齢・少子化が支部活動や地域活動をすすめにくくしている。各種補助の打ち切りと隣保館など公共施設の地元移管などが一層地元に負担を強いている。
 いくつかの市町で、隣保館の指定管理が問題となっている。指定管理者制度のメリット・デメリットをはっきりとさせ、部落問題解決の行政責任を明確にしたうえで、地元と行政が協議をすることが必要である。

▶本人通知制度の全市町での実施を求めていこう!
 9月現在県内11市6町で施行されているが、未実施の市町での実施を求める運動を強化しよう。とくに、戸籍謄本等を不正取得された被害者への個別事実告知をおこなうように当該市町に要求していくことが重要である。住民の権利が侵害されていることへの事実告知と救済は本人通知制度あるなしにかかわらず、行政の責任である。
 各ブロック・市町協議会で対行政交渉をし、成果や結果などの情報を共有しよう。


■解放運動は人類最高の完成に向かって突進する(8月5日号)

 現在、日本周辺は一触即発ではないかとも思われる状況が続いている。中国、韓国との領土問題をはじめ、戦後補償や靖国参拝など、従来は周辺国への配慮も含めながら取り扱われてきた問題を、政府自民党はすべてをタカ派的手法で清算しようとしている。特に領土問題では、ひとたび対立すれば双方は引くに引けなくなり、突き詰めていけば「戦争」でしか解決の方法は無くなってしまう。
 経済に目を向ければ、現時点では日本は円安、株高の方向に動いているが、同時にヨーロッパや東アジア周辺国の経済情勢は非常に厳しい状況である。過去の歴史をみるとき、世界的な金融恐慌は「戦争」の呼び水にもなってきた。今まさに世界情勢は危険水域に入ってきたと言える。
 私たちはこうした問題に、正面から向き合わなくてはならない。双方が対立関係の中で判断することは避け、まさに人間の英知をもってあたらなくてはならないことを肝に銘じるべきだ。
 政府自民党は「国防軍創設」から「基本的人権の制限」「天皇を国家元首に」さらには「順守義務」を権力から国民へと、「憲法」を改悪しようとしている。これは「国民を守る」憲法を「国民弾圧」の道具にしようとするものであり、その先に見えるのは、「核武装」や「集団的自衛」=「戦争」であることは明白だ。こうした動きには絶対反対の意志表示していかなくてはなならない。
 また、このような緊張感を増す状況の中でこそ、私たちの運動は重要性を増している。国内の「護憲運動」や「平和運動」も整えなくてはならない。私たちはこれまで8月には原水禁大会へ参加し、平和利用も含め「地球上のいかなる核も反対」してきたが、私たちの危惧したとおり、2年前、福島第一原発は大爆発事故を起こし、今も国土や海洋を汚染し続けている。これ以上、命と生活を脅かされるのは我慢ならないことを今こそ意志表示をしよう。
 私たちの運動は「部落解放運動」である。「人類最高の完成に向かって突進す」と90年前に意志表示をした水平社以来の伝統は、私たちが絶対的に守らなくてはならないものである。「人類最高の完成」を表明した水平社から営々と受け継ぐ命がけの闘いに学び、この暑い夏を「平和」一色に染め上げていかなくてはならない。
 原水禁世界大会は従来の「広島・長崎」に加え、「福島大会」も開催された。県連では本年も地域からの参加を案内したところ、「広島、長崎大会」に同盟員からの申し込みがあった。それぞれが県連の代表として学習を深め、平和への思いを地域に持ち帰っていただきたい。
 各地域でも平和集会や、反戦、反核の運動を作り上げていかなくてはならない。人権運動の中心である部落解放運動が、平和運動においても中心となり、最大の人権侵害である「戦争」や、それにつながるいかなる動きにも反対の声を上げていこう。

■支部・地域の活性化と運動組織の強化をすすめよう(7月1日号)

 世界的な経済危機の中、雇用をめぐる情勢は厳しく、倒産する企業と完全失業者の増加、不安定雇用の増加や子どもの貧困問題など、多くの課題がある中、特に女性が働く環境や条件整備等は、より厳しいものになっている。女性に「仕事と家庭の両立」を求めている社会の中で、男女平等の意識をつくるためには、まず、女性自身が日常生活の中や社会の中に存在するジェンダーに気づくことが重要だ。男女平等は確立されなければならないが、現実には女性に対する差別は存在する。
 また支部では、高齢化や少子化が大きな課題となり、組織の弱体化も問題となっている。部落女性アンケート調査報告会でも、若い世代の識字率の低下や生活保護世帯の増加などの問題点や雇用保険など生活にかかわる権利を知らないと答える女性の声が多くあった。
 生活や就労などで自分の生活を守るためにも、自分の権利を知るための地域での学習会などをおこなうことも重要だ。そのため、組織の強化は最も重要な課題である。今、組織内で女性の力を発揮できるような組織運営や運動になっているか、見直しを含め具体的な取り組み等について、支部を中心に進めていかなければならない。社会が大きく変化している今、組織の強化を図り、女性の力を組織内外で発揮できるよう、部落女性よ、奮闘しよう!

 また青年部運動の強化も重要な課題である。県連青年部は現在、「ファシリテーター養成講座」に取り組んでいる。この講座は青年が仲間と支部活動、地域活動を展開していくために、自分の意見を発信していくと同時に、「聴く・一緒に考える・話す」というコミュニケーション能力のスキルアップをめざして企画されている。
 昨年度おこなってきた「ディーセントワーク学習会」に続いて県連青年部が企画したこの講座は、コミュニケーション能力を培っていくことが、「組織をまとめる力」になると考えて企画された。青年部の主体的な取り組みである「ファシリテーター養成講座」を部落解放運動の喫緊の課題である「次世代の解放運動を担う青年の育成」へ向けた具体的な一歩として位置づけたい。
 今年7月27~28日に姫路市立高木総合センターで開催される大会で、県連青年部は結成から20年を迎える。1994年の結成大会の活動方針には「私たちは、運動の歴史にあぐらをかいてきたのではないでしょうか。責任を持つ立場に自分を置けばしんどいと考え、誰かが方針を出してくれると思って主体的な責任を引き受けない傾向を反省しなければなりません。解放運動は、一人ひとりが主体的に担わなければならないということを確認しよう」と書かれている。
 現在、自分の報われない境遇への不満を被差別の側、社会的弱者に向け、正義感を発揮しようと間違った行動(ヘイトスピーチなど)を起こす若者が増えている。こうした現状をしっかりと見つめ、さまざまな悩みを私たちと共有する人たちとの共闘の輪を広げ、今一度、原点に立ち、青年部活動を展開していきたい。部落青年よ、団結しよう!

■夏の知事選、参院選に全力をあげよう!(6月5日号)

 戸籍謄本を不正取得し興信所・探偵社へ有料販売、土地差別、インターネット上での差別煽動など、許すことのできない悪質な差別事件が頻発している。引き続き取り組みを強化しなければならない。
 しかしながら、社会全体を冷静にみれば、例えばネット上で差別をばらまく、いわゆる「ネトウヨ」(ネット右翼)は、ネット上の書き込み全体の中でわずか1・3%に過ぎないという専門家の分析もある。これは私たちが長年培ってきた大衆運動、共闘運動が社会を変革し、人権教育、人権啓発が学校・企業・地域社会で取り組まれるようになってきたことの大きな成果であるとも言える。
 しかし、今また、自分の報われない境遇を政治や社会構造に目を向けるのでなく、被差別の側、社会的弱者を攻撃することで「正義感」を発揮しようと間違った行動(ヘイトスピーチなど)を起こす者が増えてきている。こうした現状をしっかりと見つめ、我々はさらに高度な解放運動を展開しなければならない。
 今後の部落解放運動は、今まで以上に地区住民を中心に、就労、結婚、子育て、教育、介護、年金に悩む多くの人たちの思いを受けとめ、課題解決に向けて一緒に取り組まなければならない。差別撤廃・人権確立のため国をあげて取り組む態勢を整備させることである。地方自治体の行政にしっかりと人権施策を組み込ませることが必要である。

 この夏、兵庫県知事選挙と参議院選挙が行われる。不測の事態が起きない限り、7月4日告示・21日投開票の日程で行われる予定だ。
 井戸敏三知事は副知事時代から、国の審議会等で活躍し、そして人権侵害救済法の制定を国に求め続けてきた。また、戸籍謄本等不正取得の抑止力効果のある本人通知制度のガイドラインを県下の市町に示し、その啓発予算の補助を付けるなど、制度の促進をはかる等、熱意をもって人権行政の推進に取り組んでいる。
 私たちは井戸敏三知事の四選をめざして、全力で取り組まなければならない。井戸県政の下で、人権行政をさらに推進するため、県連の総力をあげて知事選挙にのぞもう!
 昨年の衆議院解散により、人権委員会設置法案は廃案となってしまった。そして、人権をめぐる情勢は大きく後退し、政治家による度重なる人権侵害発言、タカ派発言が横行し、人権尊重の社会とは逆方向を向きだしている。もう一度、人権尊重をめざす政治を取り戻すため、国政の場で人権派議員を増やさなければならない。知事選と同日で行われる予定の参議院選挙において、兵庫選挙区では辻やすひろさん(民主党)、全国比例区では石井一さん(民主党)を県連推薦候補と決定している。辻さん、石井さんの必勝めざして地区住民、周辺住民、共闘関係者の一人ひとりに面会し、理解と支持を求める活動を展開しよう!
 差別撤廃・人権確立の政治、行政を築き上げるため、この夏の県知事選、参議院選は決定的に重要であることを、もう一度深く認識し、全力をあげて取り組もう!

■狭山えん罪50年 再審をかちとろう(5月5日号)

▶石川さんの命は我が命 
狭山事件は部落差別が生んだ、えん罪事件である。
事件当時、被差別部落に対する差別的集中見込み捜査や、周辺住民の差別意識を悪用したメディア報道が多くの被差別部落の人たちの人生を踏みにじった。だから私たちは「石川さんの命は我が命」として闘ってきた。
しかし裁判所は、1974年の二審寺尾判決以降、一度も事実調べを行っていない。そして1994年、石川さんを殺人犯のまま仮釈放し18年。第3次再審闘争から7年目の闘いになる。

▶世論を高めるための様々な取り組み
 この間の取り組みによって、検察や裁判のあり方に市民の関心が集まり、全国各地で「狭山事件の再審を求める市民の会」が立ち上がった。そして多くのえん罪事件を生み出した原因を究明すると共に、証拠開示と全国可視化の法制化を求める運動へと発展させてきた。そして新100万人署名の達成や石川さんがジュネーブで開かれた国連・自由権規約委員会で「私は無実です」と訴えるという高まりの中で、2009年9月から裁判所、検察、弁護団による三者協議が実現した。

▶証拠開示の実現
同年12月16日第2回三者協議で門野博裁判長が検察官に8項目の証拠開示を勧告し、翌年2010年5月13日第3回三者協議で東京高検が5項目36点の証拠を開示した。石川さんが逮捕当日に書いた上申書などが証拠開示で明らかになった。筆跡鑑定とともに新証拠として提出されている。また万年筆、鞄、腕時計の3証拠に関する捜査報告書などの証拠も開示されている。さらに弁護団は、昨年9月に腕時計に関する新証拠を提出した。石川さんの「自白」によって発見されたという腕時計が被害者のものではないという疑いを示す重大な証拠である。しかし未開示の証拠物が多数存在することや、手ぬぐいや、自白内容にかかわる捜査資料がまだあることも明らかになっている。徹底した証拠開示がおこなわれ事実調べが実施されなければならない。

▶裁判長がまた代わる
3月5日付で、狭山事件の再審請求を担当する東京高裁第4刑事部の小川正持裁判長が転任。後任として河合健司裁判長が就任したが、今後の三者協議(5月)における証拠開示の積み重ねとともに、足利、布川、東電とあいついだ再審無罪の教訓をふまえ、積極的に証拠開示をするよう求めていくことが大事である。

▶不当逮捕から50年
5月1日は狭山事件から50年。5月23日は石川一雄、不当逮捕50年だ。半世紀もの永きにわたり、石川さんは無実を訴えつづけてきたことや、私たちが一人のえん罪者を支え闘いつづけていることをふり返るとともに、証拠開示と事実調べを求める世論をもっと高めるために、まずは5月23日中央集会に結集すること、そして、狭山パネル展、情宣行動、集会など、工夫を凝らした取り組みを実施しよう。

■行政闘争を強化しよう!(4月5日号)

 第54回県連大会を終え、改めて県内すべてのブロック・支部に行政要求闘争の強化を訴える。
 2002年「地対財特法」が失効した時は、「部落問題は解決した」との認識が行政と社会に蔓延した。それにより、自治体で「同和」行政を廃止・縮小する動きが加速され「同和」行政の成果と課題を具体的に総括することなく一気に廃止へと舵を切った。被差別部落の実態を把握することなく財政効果主義によって、被差別部落の存在すら無視して断行したといえる。
 とりわけ、解放運動の最重要課題として取り組んだ解放教育、解放学級が築き上げてきた尊い営みと成果は無残にも崩され、その影響が現在の学校教育現場ひいては日本社会の人権軽視に及んでいるといっても過言ではない。
 部落解放同盟として、2000年12月に施行された「人権教育および人権啓発の推進に関する法律」(以下、「人権教育・啓発推進法」)に基づく「人権教育・啓発推進に関わる基本計画」を、事業も含め部落差別の解決に向け行政に対して十分に位置づけさせる取り組みが行えたかの反省と点検が必要である。兵庫県は2006年に「人権教育及び啓発に関する総合推進指針」を策定しているが、現在においても各市町単位での具体的な取り組みを期待するに留めている現状にあり、昨年の地方自治法の改正によって法の縛りはなくなり地方自治の裁量となってしまった。兵庫県下では、合併の経緯もあり三木市と篠山市の2市のみが人権条例を制定しているほか、香美町と新温泉町も「人権啓発推進条例」を施行している現状である。
 行政闘争の主課題は
 ①今年で「人権教育・啓発推進法」が制定され13年目を迎え、各市町の取組の成果と課題を明らかにするよう行政に申し入れるとともに、基本計画・実施計画の策定がなされているのかを確認し、部落差別の解消をはじめ人権尊重のまちづくりに向けた行政の責務を追及しよう。
 ②戸籍謄本等第三者請求に対する「本人通知制度」が県内5市1町で実施され、4月からさらに3市3町で実施される。いうまでもなく、これは「同和」対策ではなく個人情報の不正取得を防止する本来の行政責任を果たす施策の一つである。しかし、部落解放同盟からの要求がなければ実施されてはいなかった。「本人通知制度」の県内全市町での実施と、健康と福祉を増進する施策を実現させるため運動を展開しよう。
 ③各支部・市連協単位での定期的な行政との意見交換や交渉の場を確保する。少なくとも年1回は交渉をおこなうことを求める。部落差別解決に向けた施策構築がなされているのか、行政の担当部局にとどまらず全庁的に取り組まれているのかなど執拗な確認と要求が重要である。
 我々は、部落解放のための行政をはじめ、人権尊重と福祉増進の行政が確立されているのかを監視し推進させなければならない。行政に対して毅然とした態度で対峙し行政闘争を強化し、部落解放を基軸に据え人権尊重のまちづくりを推進させよう

■県連第54回大会を代議員の結集と熱気溢れる前進的論議で成功させよう!(3月5日号)

 来る3月24日(日)午前10時より、明石市立市民会館において部落解放同盟兵庫県連合会第54回大会を開催する。いうまでもなく、県連大会は県連の最高決議機関であり、種々の報告を確認し、当面の重要な問題を審議する場である。
 改めて54回大会の意義と任務を提起する。
 まず、部落解放同盟永年の目標である「人権侵害救済法」制定の道程を論議する。4年前に民主党政権が誕生したときは、法制定が現実のものとなる実感があった。しかし、昨年末の衆議院議員選挙の結果、民主党は惨敗し、代わって安倍総裁が率いる自民党が政権を奪取した。気になるのは、選挙前の安倍自民党の選挙公約である。憲法改悪を前面に打ち出し、天皇を元首に、国防軍を創設し集団的自衛権を行使する。基本的人権も「国民」に限定的に保障する、としている。なにより憲法の性格を、国に遵守させるものから、国民を規制するものに大きく変換しようとしているのだ。人権侵害救済法についても「民主党の人権救済委員会設置法に断固反対」としている。激変した政治状況をうけて、「人権侵害救済法」制定についてその方針を確認する。各級議員に人権派議員を拡大することも有効な手段の一つである。夏に予定される参議院議員選挙に県連推薦候補の必勝を目指す。
 次に、日本全国であいついでおこっている個人情報大量不正取得事件に対する闘争方針の確認である。個人情報を内包している最たるものは戸籍だ。しかしというべきか、だからというべきか、戸籍謄本等の職務上請求用紙を悪用した不正取得事件が後を絶たない。既に戸籍等不正取得に絡んで全国で30人以上が逮捕されている。有罪判決が確定した者もいる。県連は不正取得を防止する有力な施策の一つである「戸籍等第三者取得に対する本人通知制度」の実施を一昨年から方針提起してきた。兵庫県も本人通知制度の導入を支持している。昨年は兵庫県内5市1町で制度が実施された。さらに相生市、加古川市、篠山市、市川町、神河町、福崎町が4月実施を決定し、具体的作業をすすめている。またいくつかの市町で今年度実施の準備がすすんでいる。県内すべての市町での導入をめざして要請行動を強化する。
 また、支部の活性化を求めていく。そのために対行政要求運動を再構築する。部落が少子高齢で疲弊している現状を打開するのは部落の努力だけでは限界がある。住民の生活を保障するのは自治体の責務である。隣保館の活用や生活と雇用を守る行政施策を求めて、対行政要求を作り上げる作業を再開する。

■本人通知制度の県内全自治体での実施を(2月5日号)

▶1
 個人情報の不正取得事件があいついで起こっている。2011年の「プライム法務事務所事件」に続き、「群馬ルート」とよばれる大量不正請求事件も昨年発覚した。県連では役員等を中心に東京に事務所をおく今回の2人の行政書士について、公文書開示請求をおこなっている。
 プライム法務事件では兵庫県内で358件不正請求・取得されたが、今回も尼崎市47件、伊丹市8件、相生市2件、三田市1件など順次報告があり、やはり相当な不正請求・取得となると思われる。この種の不正請求事件で、すでに逮捕者は30人を超えている。
 しかし、「群馬ルート」の逮捕者の裁判で次のことが明らかになっている。偽造した職務上の請求用紙を使って不正請求する手口のなか、「通知制度を導入している自治体からは取るな」と指示がでていた。つまり、本人通知制度の導入が不正取得の抑止力として機能していることが図らずも証明されたのである。また、全県内市町村で通知制度を実施している埼玉県桶川市で事前登録をしていた人の戸籍等が取得され、本人通知によって不正請求が明らかになった例もでている。
 戸籍等の第三者取得に対する本人通知制度は、不正請求防止・抑止力になることは明白である。

▶2 全国・県内での本人通知制度実施状況
 部落解放同盟中央本部の集約では昨年末現在で225の自治体が本人通知制度を導入している。この中には昨年6月実施の丹波市、8月実施の多可町、加東市、10月実施の三田市、三木市、11月実施の加西市の5市1町も含まれている。また、今年4月導入にむけ具体的な準備が相生市、加古川市ですすめられている。さらに導入方針を決定しているところとして朝来市、篠山市、西脇市、稲美町、神河町、福崎町の情報を入手している。
 兵庫県内29市、12町すべてでの本人通知制度の導入をめざして要請行動を強化しよう。また、すでに導入されたところでの登録の拡大をめざそう。戸籍謄本等の不正請求・取得は部落解放同盟だけの問題ではない。身元調査や信用調査、犯罪にも利用されている現状から市民や住民を守るのは行政の責務でもある

▶3 兵庫県も導入を支持
 兵庫県は2011年6月27日付人権推進課長名で各市町人権担当部局長に「本人通知制度に対する対応について」の通達をだした。内容は「本人通知制度は人権推進上、その抑止的効果も含め、不正取得防止を図るための意義ある手段の一つである」「当該制度について理解を求める市町民向けパンフレットを人権啓発資料として作成・配布することは人権啓発事業の対象として認めていく」と制度の導入を積極的にすすめることを期待している。

■新年を迎えて 2013年の課題と展望 県連書記長 橋本貴美男(1月5日号)

世界経済は引き続き窮乏と混乱の状態にある。アメリカ経済は崖ぶちにある。グローバル経済が世界中の財政に瀕死の重傷を負わせている。経済不況を軍事的冒険で乗り切ろうとするのが従来からの為政者のやり方であり、それは今も変わっていない。アメリカの軍事的挑発が続くなか、それに対抗する中国の行動と韓国・北朝鮮の警告は、ことが単純にいかないことを示している。領土問題の困難さと危険性を、日本の指導者だれも理解していない。一方で、世界的な青年による民主化の動きは挫折を知らず進行している。青年にこそ希望がある。国内的には、長引く経済不況と雇用不安・閉塞感から政局は混沌とし、ヒーローを求める危険な結果で新年を迎えた。守旧派の復活で、人権と福祉は後景におしさげられた。日本は再び人権抑圧の超危険な方向に引っ張られようとしている。かつて侵略戦争を引き起こし、東アジアの人々に虐殺と暴行の限りをつくした歴史を肯定する者が日本の責任者となった。侵略の反省も償いもしない姿勢は世界から断じて許されない。次世代に平和と環境、人権と福祉の社会を継承するのは今を生きる我々の使命である。

今年の兵庫県連の課題
▶1.県連組織強化・支部の活性化を!
 県連組織と支部活性化は緊急の課題である。支部活性化にむけた執行部による支部訪問と支部再編への検討を即時実施する。県連役員がまずその責任と使命を自覚し、奮闘する。各級役員・活動家にも一層の奮闘を要請する。もはや、自己中心的な思いや好き嫌いで活動している時期ではない。

▶2.登録型本人通知制度の県内全市町での実施を!
 戸籍謄本等の大量不正取得の防止、抑止力になるのは「登録型本人通知制度」である。5市1町で実施され、今年実施予定の市もいくつかある。県内全市町での実施をめざしていく。また、実施されている市町での登録拡大も追求する。

▶2.登録型本人通知制度の県内全市町での実施を!
 戸籍謄本等の大量不正取得の防止、抑止力になるのは「登録型本人通知制度」である。5市1町で実施され、今年実施予定の市もいくつかある。県内全市町での実施をめざしていく。また、実施されている市町での登録拡大も追求する。

▶3.県連財政の自立促進!
 県連財政の収支のバランスは依然支出過多となっている。自立促進を目的とした財政健全化委員会を組織し、県連財政の全面見直しにとりかかっている。大胆に改革を具体化していく。続発する差別事件にも即時対応し、部落解放への自信を生みだすため・運動強化のため、財政自主確立を目指す。

▶4.企業連の企業育成・指導体制の確立へ
 企業経営の援助となる経営相談や各種講座、納税相談の徹底のため、昨年発足の企業連への全面協力と援助と指導を強化する。

▶5.狭山事件の再審を!
 不当逮捕50年になる今年、全国の仲間とともに狭山事件の再審を実現し、石川さんの無実を勝ち取る運動を強化する。

▶6.各級選挙で組織内・人権派候補の必勝を勝ち取る