本文へスキップ

〒650-0003 神戸市中央区山本通4丁目22番25号

TEL078-222-4747(代) FAX078-222-6976


2012年

■人権週間の取り組みを進め、人権と平和の確立に向けた活動を展開しよう(12月5日号)

「世界人権宣言」は1948年12月10日、第3回国連総会で採択された。
 第2次世界大戦の深い反省から「差別を撤廃し、人権を確立することが恒久平和に通じるものである」として、国連はこの日を「世界人権デー」と定め、日本でも、12月4日~10日を「人権週間」としている。
 この「世界人権宣言」の精神をふまえ、具体的な差別問題の解決と人権の確立に向け、国連では31の人権関係条約が採択されている。しかし日本では、国際人権規約や人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約など16条約を締結しているにすぎない。しかも、条約の重要な部分、とくに差別を規制・禁止する事項や個人通報制度などについては留保しているものが多い。
 毎年、全国各地では、人権意識の高揚を図るさまざまな啓発活動が実施されている。この人権週間において、部落差別をはじめ、さまざまな差別の実態を広く訴え、部落解放・人権政策確立に向けた活動を強化していこう。  今年8月、シリア北部の主要都市アレッポで、ジャーナリストの日本人女性が、シリア政府軍と反政府組織との銃撃戦に巻き込まれて死亡した。世界の多くの地域で、いまだ戦火で命を奪われている人びとがいることが、大きく報道された。民族紛争であれ宗教対立であれ、武力によって解決できる問題は一つもない。暴力や戦争により、多くの女性や子どもなどの弱者が犠牲になっている。
 一方、日本では、生活保護受給率が年々増加を続け、年間自殺者も13年連続で3万人を超えるなど、失業や貧困問題が大きな社会問題となっている。また、2011年3月11日の東日本大震災により、地震と津波、そして原発事故被害にあった福島県の人びとへの差別発言や不買行動なども起きている。
 「世界人権宣言」は、人類共通の課題として人権確立をめざすことが、世界平和と民主主義の実現に大きく寄与することを明確にしている。しかし、部落解放運動やさまざまな人権問題に取り組む活動が広がりつつある一方で、部落差別はもとより、多くの差別事件や人権侵害がおこっている。それらの背景には、日本社会の中で、差別問題や人権問題に対する関心の薄れがある。 部落解放運動は、一貫して部落差別撤廃の闘いの中で、「平和なくして人権なし、人権なくして平和なし」と運動を進めてきた。「戦争は最大の差別であり、最大の人権侵害」である。この人権週間を契機に、「平和と人権の21世紀」の実現に向けた連帯の輪を大きく広げ、憲法改悪の動きと闘おう。
 早急な「人権侵害救済法」の制定と、人権教育・啓発の充実に向けた活動をより一層強めるため、県内の各地域で人権と平和の確立に向けた活動を展開しよう。

■狭山事件の再審の開始を!(11月5日号)

狭山事件は、部落差別に基づくえん罪事件である。日本の刑事・司法は、えん罪を次つぎと生み出している。狭山の勝利なしに司法の民主化はない。今こそ子や孫のために闘う一人ひとりの決意を結集させよう。

▶石川一雄さん、神戸の街で無実を訴える8.5狭山事件の再審を求める県民のつどい (兵庫県私学会館)

 仮出獄から18年、石川一雄さんの生きざまを追ったドキュメンタリー映画「見えない手錠をはずすまで」の映画監督である金聖雄さんが語る。
「石川さんは『我が人生に悔いなし』と言う。半世紀近く強いられた人生を送りながら、なぜそんなことが言えるのかと不思議だった。しかし撮影を重ねているうちに、その意味がわかってきた」
 「獄中で文字を獲得したこと。妻の早智子さんをはじめ、たくさんの人との出会い。狭山事件を通して生まれた固い絆。そして、えん罪被害者たちとの友情。石川さんは過酷な環境の中にありながらも、自分の人生を生き抜いてきた」。
 「取材中に石川さんがつぶやいた。足利や布川などえん罪事件での無罪判決。次は狭山だと思い、支援の勢いも増している。しかしその一方で、なかなか状況が動かないもどかしさがある。私の無実は明らか、それがいつ証明されるかだ。不屈の石川一雄だから大丈夫だと話してくれた」。
 映画は来年10月の完成予定。兵庫県連も県民共闘と、映画上映実行委員会を立ち上げた。映画づくりへの支援の輪を拡げよう。

▶狭山事件発生から半世紀、事実調べにむけて正念場、今こそ大きな世論を作ろう!
 狭山第3次再審請求から6年。これまでの果敢な闘いによって、三者協議が始まり3年になる。
 10月3日、東京高裁内で11回目の三者協議が開かれた。弁護団はこれまで、証拠開示勧告申立書や証拠開示に関わる意見書を提出してきたが、この日、検察官からは、事件直後の捜査報告書1通とスコップ関係の証拠3点が開示された。しかし、弁護団の求める目撃証言や3物証(万年筆、カバン、腕時計)に関する証拠については、開示の必要性はないという立場を堅持した。弁護団は、高裁の開示勧告以来の積み重ねをふまえて反論し、裁判官も柔軟に対応するよう検察官に促した。
 さらに弁護団は、検察官意見書への再反論として、腕時計、スコップ、筆跡に関する新証拠を提出。脅迫状の筆記インクの科学的検査や、事件当日「犯行現場」の隣で農作業をしていたOさんへの証人尋問についても、裁判所に再度求めた。
 これらをふまえて、次回三者協議が1月下旬に開かれる予定。証拠開示と事実調べを実現するために、さらに運動の輪を広げ、世論を大きくしていこう。

■第33回県研の成功をさせよう!(10月5日号)

 来る10月27日(土)に、兵庫県立のじぎく会館を主会場、兵庫人権会館をサブ会場として、部落解放研究第33回兵庫県集会が開かれる。今回は一日開催で、テーマは「水平社90年、今こそ人の世に熱と光を-『人権侵害救済法』の早期制定と『狭山事件』の再審をめざす-」。
 戸籍謄本等の不正取得や職歴の漏洩、差別落書き・発言、インターネット上での部落への誹謗中傷など、今も全国各地で部落差別事件や人権侵害が頻発している。しかし差別や人権侵害を受けた人を救済するための法整備は、まったくできていない。10年の長きにわたって取り組んできた「人権侵害救済法」の一日も早い制定を勝ち取らなくてはならない。9月19日に閣議決定された「人権委員会設置法案」の次期臨時国会における法案成立をめざし、兵庫県選出の国会議員への要請に全力を挙げよう。
 狭山事件は、石川一雄さんの不当逮捕から49年が過ぎた。三者協議で検察は、重要な部分での証拠開示を渋っている。一方、他の冤罪事件では再審開始、無罪判決獲得が相次いでいる。「次こそ狭山だ!」を合言葉に、狭山再審実現への運動を強化しよう。
 また、戸籍等の不正取得防止につながる「本人通知制度」が、丹波市、多可町、加東市で実施されている。未実施の自治体へも導入を強く求めていこう。
 教育では、経済に改善の兆しが見えない中、経済格差がそのまま教育格差へとつながり、学びたいと思う子どもたちの願いが奪われている。教育現場では、教職員が子どもとの関わり以外で時間を割かれる厳しい状況がある。今こそ子どもの生活に根ざし、地域と共に子どもたちの心を育む解放教育のさらなる充実と実践が求められている。
 いくつかの今日的課題を挙げてみたが、その課題を解決すべく、本集会は5つの分科会を設定している。
①「全国水平社90周年」闘いの歴史に学ぶ 
②隣保館が果たすべき役割
③同和・人権教育の実践を  語り継ぐ-教職員の世代交代期を迎えて
④戸籍の不正取得を防ぐ-「本人通知制度」の必要性、「改正入管法」の問題点
⑤『人権啓発』-内容の充実を求めて
 それぞれのテーマで話し合い、課題解決への取り組みを共有化していく。
 さらに、「兵庫県内自治体の市民意識調査結果から」として特別報告がある。兵庫では、5年ごとに「県民意識調査」がおこなわれているが、来年はこの調査の年にあたる。引き続き兵庫県に実施を求めていく。記念講演には、作家の五木寛之さんを招いている。
 この集会では、県内のいろんな人の取り組みが明らかになる。また、多くの人と出会える。その結果、必ず新しい発見や気づきが実感できる。是非一人でも多く結集し、議論を交わし、部落解放への新たな一歩を踏み出す集会にしよう!

■行政闘争を強化しよう!(9月5日号)

▶「特措法」失効から一〇年を迎えて

戦後、最大最悪と言われる経済危機は、いまだ景気回復の見通しが立たず、厳しい状況が続いている。国民の74%が年収200万円以下、生活保護受給率も年々増加し、国民の生活破壊が進んでいる。しかし、このような中でも野田首相は消費税増税を迫り、原発やTPP、沖縄基地など、多くの負担を国民に強いている。
 2002年3月末に「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(地対財特法)が失効し、33年間続けられてきた特別対策事業が終了した。それから10年が経過した現在、部落差別の現状はどうなっているだろうか。
 確かに、同和対策審議会の答申(1965年)が出された当時から比べると、地区の生活環境は格段に良くなった。しかし、昨年新たに発覚した司法書士による戸籍等不正取得事件や土地差別調査事件、さらにはインターネットでの差別情報など、前述した社会問題を背景に部落差別はますます陰湿・悪質化している。
 今も厳しい部落差別の実態がある中、部落問題を解決するための「同和行政」は積極的に展開されなければならない。しかし、「人権」という大きな流れの中で、部落問題という個別の課題が埋没し、それにより各自治体の意識も大きく変化してきている。社会システムからくる部落問題は、「意識」の問題にすり替えられ、自治体の責務もまた、各地域や個人間の問題として、それぞれで解決すべきという風潮になっている。
 こうした行政の無責任な態度は、行財政改革という大義のために、部落問題解決に向けた多くの施策が実施されていないことにも表れている。我われの求める「部落実態調査」に取り組まないことも、その一つである。行政が部落問題の解決に向け、具体的に、部落差別の実態やその背景を把握することは当然のはず。にも関わらず、実行しないのは「責任放棄」と言わざるをえない。
 一部に同和行政の終結に向けた策動もあるが、内閣同和対策審議会答申が示すように、部落差別が現存する限り同和行政は積極的に推進されなければならない。部落問題を一般的な人権行政の中に含めて行えば事足りるという話ではない。標語や人権講演会だけでは、問題解決には至らない。まずは原点に立ち返り、部落差別の現状認識からはじめる必要があるのではないか。
 我われは、部落問題解決のための同和行政を一歩も後退させてはならない。県連は今月中にも対県要望書を提出し、部落差別事件が続発する現状を踏まえ、実態調査や隣保館活動の充実、就職困難者への就労支援の拡充などを求めていく。各支部や市連協においても、それぞれの課題を明らかにしながら具体的な要望をまとめ、積極的な行政闘争を展開しよう。

■原発事故に思う(8月5日号)

①原発の現状
 今年7月に出された日本原子力産業協会の報告によると、世界の原子炉は427基で、建設中が75基、計画中は94基にのぼっている。アジアにおいては、中国・韓国・インドが国産化設計で設備を拡大している。日本においては、アメリカ・フランスに次いで世界で3番目の50基を有し、うち現在、大飯原発の2基が稼働し、7月からフル稼働運転をしている。
②事故処理の作業員
 昨年3月11日の東日本大震災で起きた福島第一原発事故に伴い、広島に投下された原爆の168個分に相当する放射性セシウムが放出された。一基の原子炉が完全に崩壊していれば、原爆の数百倍から数千倍もの放射能汚染になると言われており、原発は、それだけ多くの危険を伴っているのである。 
 現在も原子炉安定化作業と放射能漏えい防止作業が続けられているが、現場作業員の話によると、何ら大きな変化はなく作業は難航しているという。作業を拒むものは放射能の存在にほかならない。それを裏付ける被曝線量詐称も発覚している。そこから見えてくるのは、劣悪な労働条件と、そんな状況下でも働かざるをえない作業従事者の苦悩である。誰も被曝したくて働いているわけではない。生活のためである。ここに、長引く不況による社会的弱者の置かれた状況が見える。
よう。
③福島差別
 世界で唯一の原爆被害国である日本において、原爆投下時と同じ差別が起こった。広島・長崎と同じ「うつる、汚い」である。放射能差別の歴史は原発事故により繰り返された。当時は放射能に対して充分な知識やデータが無かったからとされているが、現在においてはどうであろうか。原発依存、推進行政により放射能の危険性と影響について充分な説明や啓発が蔑にされてきたのではないだろうか。原発の有効性と安全性を強調し、飴で原発基地周辺住民をも洗脳してきたからではないだろうか。いかに正しい教育を持続して行うかが必要かつ重要なのである。
④福島の子どもたち
 ある大学教授の調査において、福島市内の子どもたちに抑うつ状態の子どもの割合が増加しているという調査結果が発表されている。放射能被曝による身体的影響が懸念され、放射能の見える化や内部被曝抑制のための食物の汚染測定などがされているが、放射能汚染地域のすべての子どもたちの被曝量測定や定期健康診断など、心身両面におけるケアが必要である。
⑤脱原発、世論の高まり
 6月16日に行われた「さよなら原発10万人集会」に県連からも参加し、17万人もの人々が結集した。毎週金曜日には、首相官邸前で抗議行動が展開され、脱原発の世論が高まりを見せている。また脱原発1000万人署名も、これまでに785万筆もの署名が寄せられ、引続き取り組まれている。一方で、原発の電力供給に甘えていたこと、そして、現実問題として原発事故により周辺住民に一番被害を与えてしまったという事実を忘れてはならない。
 我々は、部落差別解消に向けての取り組みと同じく、原発問題を他人事として捉えていてはならない。複雑な問題を抱えている原発問題ではあるが、脱原発に向けた取り組みと、被災者・被災地支援に引き続き努力しなければならない。

■新たな外国人管理体制の問題点(7月5日号)

入管法・入管特例法・住基法の改定、外登法廃止の問題点については、部落解放6月号の「新たな外国人管理法を問う」で特集されている。ここではそれらと少し違う観点で問題点を指摘する。
▶1
 6月上旬、次のようなメールが飛び込んできた。「友人が在日の保険契約者の方に、大至急、市役所で証明を取っておくことを勧めているそうです。市役所等で「外国人登録原票の写し」を取っておく必要性について。(中略)新しい外国人住民票には登録基準地(旧本籍地)の記入がないばかりか、同居していない家族との関係を証明することが困難になります。将来の財産相続、別居家族用健康保険証の発行、奨学金の申請時の家族の収入証明、携帯電話の家族割引の申請、その他、日本人なら戸籍謄本等で証明できる家族関係や登録基準地(旧本籍地)の証明が、外国人の場合は日本の役所の書類で証明することが、これからは困難になります。外国人の名前や「通称」の変更、そして「外国人登録原票の写し」の申請は6月18日までに国に届けるように(中略)以後は、外国人住民票の発行に関わる業務との関係で受け付けないと言うことです」(すでに期日は過ぎているが)
 日本で生活する外国人登録当事者に改定の内容が徹底されていない。国家による一方的な一元的外国人管理制度である。

▶2
 2005年に日本の入管システムをわずか10万円で落札したのはアクセンチュア社。バミューダからアイルランドへ本社を移しているが、元々はアメリカの企業である。
 従来日本の出入国管理局システムを構築してきたのは日立製作所であった。ところが、「刷新可能性調査」をアクセンチュア社が2004年に5,880万円で受注した。さらに同調査に基づいた「最適化計画」を9,492万円で受注し、そして同年の「入国管理局出入国管理情報管理室ならびにIC旅券など認証システム試行運用及び自動化ゲートシステム実証実験の受託業者」にアクセンチュア社が10万円で名乗りをあげ、落札した。
 実は、アクセンチュア社は法務省関係だけでも「登記」「検察」「入管」のデータベースに深く関与し始めている。
 アクセンチュア社はUS-VISITを100億ドルで入札している。国の基幹的治安情報のすべてを外国企業に委ねているのが実情である。外国人からの指紋採取とIC旅券という我が国の生体認証旅券システムは、アメリカのUS-VISITと連結されている。アメリカ従属は経済面や軍事面だけでなく、情報管理にまで及んでいる。

▶3
日本版US-VISITに対して国際的な抗議も起こっている。個人の人権、とりわけ国際人権条約で認められているプライバシーの権利に反する内容となっている。日本のシステムは無差別に個人情報をすべての外国人の旅行者から集めることを目的としている。日本を訪れる訪問者をあたかも犯罪者であるかのように扱うもの。外国籍の家族を持つ者、外国籍の者にとって侮辱であり、日本に対する感情を悪化させるだけである。

■名張毒ぶどう酒事件の再審取り消しに思う(県連書記長橋本貴美男)(6月5日号)

▶1
 5月25日、名古屋高裁刑事2部(下山保男裁判長)は、「名張毒ぶどう酒事件」の再審請求を退けた。これは「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の鉄則を逸脱するものであり、真相の解明に蓋をするものである。
 名張毒ぶどう酒事件差し戻し審決定骨子(新聞報道)は次の通り。
①(弁護団提出の)新証拠は、毒物がニッカリンTではないことを証明するほどの証拠価値はない。
②奥西死刑囚がニッカリンTを所持していた事実が状況証拠としての価値を失ったとも、毒物に関する捜査段階の自白が客観的事実と矛盾するともいえない。
③奥西死刑囚以外に毒物を混入できた者はいないとの判断は動かない。逮捕前の自白は根幹部分において十分信用できる。
④(奥西死刑囚が)事件の犯人であるとした確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じる余地はない

▶2
 名張毒ぶどう酒事件とは、1961年3月28日に三重県名張市葛尾地区の公民館で起きた毒物混入事件のこと。懇親会で出されたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。
 初期捜査段階からすでに見込み捜査がされていた。それは、事件直後に公民館に駆けつけて治療にあたった医師の「今までずっと、毒物はニッカリンTだと思っていた」という発言に影響されてのことだった。葛尾の人たちもまた、「あの時代はニッカリンTが一番茶の消毒に効いた。葛尾では勝(奥西死刑囚)しか茶を作っていない。ニッカリンTを持つ理由があるのは勝しかいないと思っていた」という。これほど予断と偏見に満ちたものはない。

▶3
 第7次再審請求の経過をみると、司法判断が紆余曲折しているのがわかる。
 02年4月第7次再審請求。05年4月名古屋高裁が再審開始決定。名古屋高検が異議申し立て。06年12月名古屋高裁(門野裁判長)が再審開始取り消し。弁護団が最高裁に特別抗告。10年4月最高裁が審理差し戻し。その際最高裁が求めたのは、再審開始決定を取り消した差し戻し前の高裁決定のような「推論」ではなく、科学的な「証拠」を示すことだった。
 今回の審議で問題となったのは、5人が死亡、12人が中毒になった毒物の特定である。
 弁護団は「ニッカリンTであれば水溶液の中に不純物が含まれるはずだが、事件直後の鑑定では不純物が検出されていない」と指摘、「混入された農薬はニッカリンTではなく、自白と矛盾する」と主張した。
 犯行に使われたものと同じぶどう酒にニッカリンTを入れた検体では、不純物(トリエチルピロホスフェート)が検出されたが、犯行に使われた飲み残しのぶどう酒からは、検出されなかった。しかし、下山裁判長は、毒物がニッカリンTではなかった疑いがあるとする鑑定について審理を尽くさないまま、検察側の主張を採用した。審理が長期化したのも、検察のサボタージュ(怠慢)ではないのか。
 「事件前夜、自宅にあった瓶入りのニッカリンTを竹筒に移した」などの自白もあるが、その瓶や竹筒も見つかっていない。
 無垢の被害者を出さないため、真実の究明を求めたい。

■証拠開示の法制化を求め、狭山再審を実現しよう!(5月5日号)

▶半世紀近くに及ぶ冤罪の訴え
 1963年5月、埼玉県狭山市で起きた女子高校生誘拐殺害事件いわゆる狭山事件で、不当逮捕された石川一雄さんが冤罪を叫び続けて49年、あと1年余で半世紀になろうとしている。
 石川さんは、窃盗など別件の容疑で逮捕され、警察の留置所(代用監獄)での1ヶ月におよぶ取り調べでウソの自白を強要され、冤罪に陥れられた。
 06年5月、石川さんは弁護団とともに東京高裁へ第3次再審請求を申し立て、筆跡鑑定などの無実を示す新証拠を提出し再審開始を求めた。
 また07年には、狭山を闘う全国の仲間とともに取り組んだ「狭山事件の再審を求める署名」100万筆を、東京高裁へ提出した。

▶民動き始めた狭山再審
 09年9月から裁判所、検察官、弁護団による三者協議が始まり狭山事件の再審は大きく動き始めた。同年12月には、審理を担当する東京高裁第4刑事部の門野裁判長が東京高検の検察官に証拠開示を勧告し、翌年5月、検察官から5項目36点の証拠が開示された。その中には、石川さんが事件当時に書いた上申書や取調べ録音テープ、捜査報告書などが含まれていた。47年目にしてようやく開示された証拠によって、石川さんの無実がさらに明らかになっている。

▶第10回三者協議
 4月23日、東京高裁で第10回三者協議がひらかれ、小川正持裁判長、担当裁判官、東京高検の担当検察官、弁護団(中山主任弁護人ら10人)が出席した。
 弁護団は、昨年10月4日付けの意見書で、死体を埋めるために使用したとして有罪証拠の一つになって いる「スコップ」に関わる証拠の開示を求めていたが、今回の三者協議で、「スコップ」に関する捜査書類など19点が新たに開示された。
 しかし、弁護団の求める他の「万年筆」の隠し場所の図面や殺害事件における決定的な証拠であるはずの「殺害現場」を特定するための捜査書類については、いまだ「不見当」として開示されておらず、今回開示された証拠分析を急ぐとともにさらなる証拠開示を求めていかなければならない。また、殺害現場の自白を裏付ける証拠がまったく出されていないことから、事件当時に殺害現場とされる「雑木林」の近くで農作業をしていたOさんの証人尋問などの事実調べも強く求めていく必要がある。

▶次は狭山だ!
 足利事件など他の冤罪事件と同様、狭山事件で再審の扉を開くためには「証拠開示」が大きなカギを握る。この間の冤罪事件を教訓に、冤罪防止や誤判から無実の人を救済するための「取調べの全面可視化」や「公正な証拠開示の法制化」を求める請願署名に引き続き取り組むとともに、狭山事件の再審を求める市民の会が企画・制作したDVD「石川一雄さんは無実だ!3つの疑問・無実の証明」を活用して各地で学習活動をおこない、狭山事件における全証拠の開示と事実調べ、さらには再審開始への世論を大きくしよう。


■第53回県連大会を成功させよう!(3月5日号)

 来る3月25日西脇市民会館において第53回県連大会を開催する。人権侵害救済法制定、狭山第3次再審請求の実現がより現実味を帯びてきた重要な時期での開催となる。また、戸籍謄本等第三者取得に対する本人通知制度の県内すべての自治体での実施、若者の生活と雇用の確保や、組織内企業の育成のための企業連結成など重要な課題についての方針を決める大会である。

▶①本大会の意義
 兵庫県連に結集している各ブロック・支部の役員がどこまで自覚しているか懸念されるが、実は部落解放同盟兵庫県連合会は全国のなかでも最大人数の同盟員を擁する組織となっている。しかも〝兵庫は全国の縮図〟といわれるように、県内の各支部が置かれている状況もさまざまで、全国の部落が抱える課題が凝縮されている。過疎地域における極端な人口減少と地域共同生活の維持の困難、都市部での人間関係の疎遠、産業の空洞化など、部落の実態を直視することが必要である。

 部落解放運動における部落の実態把握や方針提起は、兵庫県連に課せられた任務でもある。兵庫から全国にむけて方針を提起する必然性がある。個人的な・あるいは地域偏在の関心のみで兵庫県連の運動を左右することは許されない。

▶②民主的県連運動の継承・発展
 昨年、兵庫県内だけでも多くの差別事件が惹起している。東日本大震災に乗じて部落解放運動・教育に協力的な人物を誹謗・中傷するなりすまし事件、インターネット上の差別事件、司法書士や行政書士による戸籍謄本等不正取得事件など悪質巧妙な事件が続発している。
 他者を糺すためには、自己の身を律し、不正があれば徹底的に原因を究明し、民主的な運動を一層すすめることが、組織の信頼を確立し、存在意義につながる。部落解放同盟の任務は部落の完全解放である。
 部落解放運動の先達は命をかけて闘いを継続してきた。水平社結成90周年を迎える今日、水平社の輝かしい歴史に汚点をつけることのないよう強固な県連体制を確立しよう。

▶③兵庫だからこそできる運動を
 特措法失効から10年、永年にわたり「同和」対策事業が実施されてきたなか、兵庫で実施されなかったのは、九州の炭鉱での「ボタ山」関連事業だけと言ってもよいほどさまざまな施策が実施されてきた。
 これまでの施策や成果を総括し、兵庫の各部落を活性化させる取り組みを模索しよう。自治体に頼りきるのではなく、対立するのではなく、共同して取り組みを展開することを視野にいれた方策も検討しよう。
 県内24ブロックそれぞれの機能充実も模索しよう。ブロック事務委託金のより高度な活用もやりきろう。

▶④若者の生活と雇用確保が緊急の課題
 東日本大震災と福島第一原発事故は、直接的な犠牲者を生み出し、依然深刻な被曝を強要している。
 さらにコスト削減を追求する企業が人件費の安い地域に工場を設置した影響もでている。日本経済の不況が直接部落の若者を襲っている。若者の生活と雇用確保を最重点課題においた取り組みや運動を展開しよう。起業家育成・指導、技能訓練・資格所得など仕事につながる方策の検討と実施を図ろう。

■全水・県水結成90年を期に、兵庫の解放運動を高揚させよう(2月5日号)

▶1
 本年は、全国水平社創立90周年と同時に、兵庫県水平社創立90年という記念すべき年にあたる。
 1922年3月3日、京都の岡崎公会堂で開かれた全国水平社創立大会。それはまさに、日本における人権宣言の日であった。高らかに謳いあげられた「全国に散在する吾が特殊部落民よ団結せよ!」で始まる「水平社宣言」は、今も多くの人の心を響かせる。
 創立当初の運動を先導してきた活動家は、ほとんどが20代の青年だった。「差別撤廃」という一点で結ばれた部落大衆が結集し、これまでの同情や憐れみに期待する融和運動から、「部落民自身の行動によって絶対の解放を期す」運動へと発展させた。それはやがて、兵庫における水平運動を誕生させるきっかけとなった。

▶2
 兵庫県水平社は1922年11月26日、神戸の地で産声をあげた。暗黒の闇の世に眩いばかりの光を放つ水平運動は、燎原の火のごとく燃え広がり、同年12月に住吉水平社、翌年4月に姫路の高木水平社、5月には神戸の番町水平社、加古郡の二子水平社が結成されるなど、県内の部落で続々と荊冠旗が打ち立てられた。
 それまで、差別に対して泣き寝入りの状態にあっただけに、差別事件に対する糾弾闘争は激しく燃え上がった。とりわけ、1923年に加古郡別府村で起きた別府村事件では、凄まじい官憲の弾圧にあうが、そのことが部落大衆の差別への怒りに油を注ぐ結果となり、団結をより一層強めた。
 さらには、西中水平社のきっかけにもなった氷上郡幸世村の京橋事件や、松茸山の入会権をめぐっての松茸山事件、姫路の北中皮革争議など、多くの犠牲者を出しながらも果敢に闘われた。
 今日の兵庫における部落解放運動は、このような厳しい闘いの歴史の上に成り立ち、先人たちの献身的な活動の上に築かれてきたのである。

▶3
 その水平社創立から90年を経た今、部落差別はどんな状態にあるのだろうか。
 この間明らかになった戸籍謄本等不正取得事件や土地差別事件を見てもわかるように、今日の部落差別は、単に昔の封建的な制度や考え方として残っているのではなく、社会のさまざまな矛盾と結びついて残されている。
 一向に上向かない日本経済、競争主義で篩にかけられて容赦なく突き落とされ、セーフティネットも崩壊寸前。生活そのものに不安を抱えながら暮らしている市民がどれほどいるだろうか。
 こうした現状をみたとき、奈良県柏原の燕会の青年たちが、厳しい部落差別の本質を鋭く捉えて書きあげた「水平社宣言」を思い出す。長い間虐げられ、人の世の冷たさを骨に染みている我われだからこそできることが何かあるはずだ。
 この全水・県水90年を期に、『人の世に熱あれ、人間に光あれ』という結びの言葉に込められた先人たちの熱い思いや、その闘いの歴史を振り返り、すべての人の生活を守り、一人ひとりの人権が尊重される社会の創造をめざす運動を、兵庫の地で高揚させよう。

■新年を迎えて 2012年の課題と展望(1月5日号)

▶一、国内情勢
 第三次補正予算が昨年11月21日に成立した。その内容は大衆に負担を強いるものとなっている。復興増税は今後10年間続く。所得税4%引き上げや個人所得税の均等割引き上げ、所得控除見直し等を含めると、大衆増税は実に9兆円になる。
 一方、復興法人税は10%引き上げで2兆4千億円増税と公表している。が、実質は違う。いったん法人税を4.5%引き下げ、そのうえで10%増税するというもの。しかも法人増税は3年間だけで、実質減税となる。政府とマスメディアは法人税増税だけを大々的に宣伝し、企業も増税なのだからと大衆に増税を迫っている。
 野田首相は、自民党政権時代からの証券優遇税制延長など、富裕者の利益を優先し、そのツケを復興財源に上乗せする形で大衆に押しつけようとしている。原発事故問題でも真っ先にしたことは、原発再稼働の容認だった。福島県の広範囲がチェルノブイリ周辺並に放射能汚染されているにもかかわらず、住民の避難や疎開を全く行うことなく、大量の被曝を強要し続けている。他にも、消費税増税、TPP参加、沖縄米軍軍事基地問題、非核三原則の見直しなど、危険な兆候が山積している。

▶二、全国的課題
①人権侵害救済法の制定
 通常国会での成立を目指す。
 県内での差別事件が跡を絶たない。しかも差別はがきや嫌がらせ宅配便など、いずれも被害届さえ受け付けられない。これが日本の状況である。

②狭山第三次再審の実現
 石川さんの不当逮捕から49年になる。12月の三者協議で検察は、家宅捜査資料など14点を開示した。弁護団は開示された証拠を精査し、再審開始を求めていくことになる。
 他の冤罪事件で再審開始が相次いでいる。昨年11月30日、福井県女子中学生殺人事件で実刑判決を受けた前川さんの再審が決定した。また袴田事件では、静岡地裁の開示勧告に応じ、取調べ録音テープなど176点の証拠が開示された。
 「次は狭山だ!」を合い言葉に、狭山再審運動を強化しよう。

▶三、県連重要課題
①支部の活性化
 国内情勢は、我々の生活に一層厳しさを増している。支部活動の活性化は、相談・世話役活動の強化にある。県連からの情報提供、支部活動家の一層の奮闘が求められる。

②本人通知制度の実施
 戸籍謄本等の不正取得を防止する「本人通知制度」が全国的に広まっている。昨年12月16日現在、埼玉県全市町村での実施を含め、124自治体で始まっている。県内でも昨年12月、三木市の定例議会で市長から条例案が提案された。この他にも導入を検討している市町が増えている。県内全市町での実施を求めていく。

③青年の生活と雇用の確保
 戦後最悪の雇用・失業状態が進行している。とくに青年層の状態が悪化、非正規雇用など生活できないくらいの低賃金も多く、社会的セーフティネットも崩壊し始めている。部落青年の生活と雇用を守る取り組みが重要。まず青年の居場所づくりから始めよう。

④企業連の組織化
部落企業者の支援や相談活動を強化するため、企業連結成の実現を目指す。